(身の回りにあります)「外部被ばく」「内部被ばく」とは。

放射線に関する基礎知識

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

今日は、

・「外部被ばく」や「内部被ばく」という言葉を聞くが、その違いや、日本人や世界の人々がどの程度被ばくしているのか、知りたい。

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (身の回りにあります)「外部被ばく」「内部被ばく」とは。
    • 外部被ばくにはどのようなものがあるか。
    • 内部被ばくにはどのようなものがあるか。
  2. 日本人や世界の人々はどの程度被ばくしているのか。
  3. 放射線被ばくによる人体への影響について
  4. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(身の回りにあります)「外部被ばく」「内部被ばく」とは。

「外部被ばく」と「内部被ばく」の意味は、その言葉の通りで、人への被ばくを考えた場合、

・外部被ばく・・・人の外部(体外)にある放射性物質から放出される放射線による被ばく
・内部被ばく・・・人の内部(体内)にある放射性物質から放出される放射線による被ばく

のことです。

外部被ばくにはどのようなものがあるか。


外部被ばくは、何も原子力発電所の事故やテロ、また核実験などで、外部に放出してしまった放射性物質に由来するものばかりではありません。

平常時でも常に私たちは放射線による外部被ばくを受けています。

例えば、

・宇宙から絶えず地球に降り注いでいる宇宙線
・地表面や空気中にある放射性物質が放出する放射線
・医療被ばく(例:CT検査)

などです。

私たちは、常にこうした、放射線からの外部被ばくに晒されているのです。

内部被ばくにはどのようなものがあるか。


内部被ばくも、外部被ばくと同様に、原子力発電所の事故やテロ、または核実験などの、特別な環境下での被ばくだけではありません。

日常生活の中でも放射線による内部被ばくを受けています。

例えば、

・呼吸に伴うラドンの摂取
・皮膚からの摂取
・食事
・医療被ばく(例:放射性トレーサー)

ラドンの摂取量は居住地域や住宅の構造によって変わりますし、食事からの摂取量も、当然食事の内容によって変わりますが、私たちは常にこうした内部被ばくにも晒されています。

日本人や世界の人々はどの程度被ばくしているのか。

では、日本人や、世界の人々は、一体どの程度の被ばくをしているのでしょうか。

日本人の日常生活における年間の被ばく量(mSv/y)は以下の図の通りです。

ラドン・トロン(ラドンの放射性同位体の一つ。こちらを参照。):0.48
食品:0.99
宇宙:0.3
大地:0.33
医療被ばく:3.87
合計:6.0

出典:国連科学委員会(UNSCEAR)2008年報告、(公財)原子力安全研究協会「生活環境放射線」(平成23年)より作成

一方、世界の人々の日常生活における年間の被ばく量(mSv/y)は以下の図の通りです。

ラドン・トロン:1.26
食品:0.29
宇宙:0.39
大地:0.48
医療被ばく:0.6
合計:3.0

出典:国連科学委員会(UNSCEAR)2008年報告、(公財)原子力安全研究協会「生活環境放射線」(平成23年)より作成

まず、全体の被ばく量としては、日本人の被ばく線量が年間約6mSvであるのに対して、世界平均では約3mSvとなっており、日本人は世界平均と比べておおよそ2倍の被ばくをしていることになります。

その内訳を見ると、ラドンやトロンによる被ばくが少ないのに対して、食品からの被ばくがやや多く、また、医療被ばくが非常に多いことが特徴です。

ラドンやトロンは室内での被ばくが主な発生源なので、日本家屋は比較的風通しが良いこと、また、食品からの被ばく量が多いのは、魚介類の消費量が他国と比べて多いこと、さらに、医療被ばくが多いのは、日本人や定期的な健康診断などを受ける機会が多いこと、がそれぞれ被ばく量の違いの原因と考えられています。

放射線被ばくによる人体への影響について

こちらの記事で解説したように、放射線被ばくによる人体への影響については、シーベルト(Sv)という単位で表されます。

正確な実効線量は、こちらの記事で解説したように、放射線の種類や被ばくした臓器の種類ごとに影響を勘案して求められます。

つまり、放射線被ばくによる人体への影響については、例えば

・被ばく線量
・被ばくした体の部位
・放射線の種類
・被ばく時間

によって変わってきます。

被ばくしたか、していないか、という事実だけではなく、こうした要素も加味して評価する必要があります。

ただ、被ばく線量と人体への影響に関する傾向や症状等については、様々なデータや知見がありますので、それらについてはこちらの記事こちらの記事こちらの記事、またはこちらの記事をご参照ください。

まとめ

放射性物質による外部被ばくも、内部被ばくも、決して特別なものではなく、大地や大気、食事といった日常生活の中に存在するものです。

また、平均的な日本人の被ばく量は世界各国と比べておおよそ2倍程度となっており、それには、食生活や居住実態、検診制度などが関連しています。

放射線被ばくによる健康影響については、どんな被ばくでも人体に悪い影響が現れるわけではなく、放射線の量や時間等によって異なってきます。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

<日本語版>

<英語版>

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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