(まずは全体像を知りましょう)中間貯蔵施設について(その1)

除染、特定廃棄物の処理

写真出典:中間貯蔵工事情報センター(大熊1工区受入分別施設)

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

これまで、除染に関しては、除染の目的除染の工程や、除染で発生した土などの処理について解説してきました。

今回から数回に渡って、福島県内において発生した除去土壌等を一時的に保管している中間貯蔵施設について解説したいと思います。

今回は、

・中間貯蔵施設って何をする場所なの?
・中間貯蔵施設ってどこにあるの?
・中間貯蔵施設にはどんな施設があるの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1.  (まずは全体像を知りましょう)中間貯蔵施設について(その1)
  2. 中間貯蔵施設は何をする施設か
  3. 中間貯蔵施設はどこにあるのか
  4. 保管されている土などの最終処分について
  5. 中間貯蔵施設にはどんな施設があるのか
    • 保管場
    • 受入・分別施設
    • 土壌貯蔵施設
    • 仮設焼却施設・仮設灰処理施設
    • 廃棄物貯蔵施設
    • その他の施設
  6. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(まずは全体像を知りましょう)中間貯蔵施設について(その1)

この記事では、まず中間貯蔵施設の全体像についてご説明し、その後の記事で、個別の施設や中間貯蔵施設を巡る今後の課題などについてより詳細に説明をしたいと思います。

中間貯蔵施設は何をする施設か


まず、中間貯蔵施設とは、何をするための施設なのでしょうか。

過去にこちらの記事において簡単に触れていますが、この施設で取り扱っているものに関するポイントは以下の3つです。

・ 福島県内で発生した土や廃棄物を一時的に保管する施設である(他の県で発生したものは保管しない)
・ 除染で発生した土や廃棄物を一時的に保管する施設である(土や廃棄物の放射能濃度は関係ない)
・ 特定廃棄物のうち、放射能濃度が100,000Bq/kgを超えるものを一時的に保管する施設である(特定廃棄物については、こちらの記事を参照ください)

あらゆる種類の土や廃棄物を取り扱っているわけではないので、これら3つのポイントについては押さえておきましょう。

中間貯蔵施設はどこにあるのか

では、中間貯蔵施設はどこにあるのでしょうか。

福島県にある、ということは知っている方も多いかもしれません。

福島県の太平洋側、大熊町と双葉町にまたがって、福島第一原子力発電所を囲むように設置されています。

そして、その大きさは約16kmにおよび、平均すると、東西方向に約2km、南北方向に約8kmの長さがあります。

これは東京都の渋谷区(15.1km2)や中野区(15.6km2)に相当する広さです。

中間貯蔵施設は、まさに、ちょっとした街1つ分の大きさがある、というイメージを持っていただければと思います。

保管されている土などの最終処分について


そして、知っておくべき大切なこととして、中間貯蔵施設は、前述したように、福島県内において、除染で発生した土などを一時的に保管する施設ですが、これらの土などは、中間貯蔵開始後30年以内(2045年3月まで)に福島県外において最終処分を完了させることが、以下の通り、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法に明記されています。

(国の責務)
第三条 国は、中間貯蔵及びポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理の確実かつ適正な実施の確保を図るため、万全の措置を講ずるものとする。
2 国は、前項の措置として、特に、中間貯蔵を行うために必要な施設を整備し、及びその安全を確保するとともに、当該施設の周辺の地域の住民その他の関係者の理解と協力を得るために必要な措置を講ずるほか、中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする

(参照)中間貯蔵・環境安全事業株式会社法

除染で発生する土壌等の量は帰還困難区域を除いても約1,400万m3と見積もられており、それだけの量を受け入れる場所を探すことは非常に難しいことから、国としては、少しでもその量を減らすため、再生利用を推進しようとしていますが、その取組については、また別の記事で説明したいと思います。

中間貯蔵施設にはどんな施設があるのか

中間貯蔵施設は、単一の施設ではなく、様々な種類の施設が広大な区域内に配置されています(上図参照)。

具体的な施設について、順番に説明していきたいと思います。

保管場

細かな名称としては様々ありますが、代表的な物として保管場を紹介します。

保管場は簡単に言うと、中間貯蔵施設の外から輸送されてきた除去土壌等を、それが受入・分別施設に運ばれるまでの間、一時的に保管しておくための施設です。

トラックが直接受入・分別施設などに運べば、積み替えの時間や手間もないので、最も効率が良いですが、処理能力などの関係上、一部はどうしても保管場において保管する必要があります。

保管しているものは、除去土壌等の他に、容器残さ、家屋等を解体して発生した廃棄物などがあります。

その構造はこちらの記事で解説した仮置場とほぼ同じですが、保管しているものの種類ごとに若干の差があります。

受入・分別施設


受入・分別施設は、その名の通り、土壌貯蔵施設に運ばれる前段階として、運ばれてきた除去土壌等を分別処理している施設になります。

詳細はこちらの記事で解説していますが、ここでは除去土壌等は2回のふるいにかけられ、大きな石、そして枝や葉などの有機物が除去されます。

最終的には、粒径が2cm以下の土のみが土壌貯蔵施設に運搬、貯蔵されます。

土壌貯蔵施設


土壌貯蔵施設についても、詳細はこちらの記事で解説していますが、上で説明した受入・分別施設において分別処理した土壌を保管しておくための施設です。

高さは最大で15mになり、その容量は地形などによって変わりますが、大きいものでは300万m3を超えるものもあります。

その保管期間は未定ですが、上でも述べたように、2045年3月までに全ての除去土壌を福島県外で最終処分することとなっており、将来的に再度搬出されるまでの間は、安定的かつ安全に保管しておく必要があります。

仮設焼却施設・仮設灰処理施設


仮設焼却施設は、中間貯蔵施設の外にも建設されていますが、中間貯蔵施設の区域内にも、炉のタイプが異なる3つの施設が建てられています。

ここでは、草木類などの可燃性の除染廃棄物や、除去土壌等を保管していた容器残さなどが焼却され、減容化されています。

仮設焼却施設からは、焼却灰(主灰及び飛灰)が発生し、これらは仮設灰処理施設に運ばれます。

また、一部の仮設焼却施設からはスラグも発生しますが、これは次の再生利用までの間、一時的に保管されます。

仮設灰処理施設では、高温の環境下で灰が溶融され、その後急激に冷やすことで、スラグが発生します。

このスラグは、仮設焼却施設から発生するスラグと合わせて保管されています。

また、この中から金属類も回収されており、こちらも、将来的な再生利用までの間、保管されています。

仮設灰処理施設における処理工程でも、やはり飛灰が発生します。

仮設灰処理施設で発生する飛灰(ばいじん)については、次に説明する廃棄物貯蔵施設において、次の処理までの間、長期間に渡って保管されています。

廃棄物貯蔵施設

廃棄物貯蔵施設では、前述したように、仮設灰処理施設で発生したばいじんを保管しています。

このばいじんは、仮設焼却施設で減容化して発生した灰を、さらに仮設灰処理施設で減容化した工程で発生したものなので、これ以上の減容化は困難ですし、多少減容化できたとしても、非常に効率が悪くなると考えられます。

また、この減容化の工程で、現在環境中に残っている放射性物質のうち、主要な放射性核種である放射性セシウムは、このばいじんに集まり、生成物であるスラグや金属類に残る割合は非常に少なくなります。

この結果、スラグや金属類は、再生利用が可能な程度まで放射能濃度は低減されますが、その代わり、ばいじん中の放射能濃度が高くなります。

詳細については、こちらの記事で解説しています。

その他の施設

ここまでに解説してきた施設は、除去土壌等の処理に関して、中間貯蔵施設の中核を担う施設であり、各施設における処理工程などについては、こちらの記事こちらの記事で解説しています。

また、この他にも、スクリーニング施設、技術実証施設、情報センターなど、多くの施設が中間貯蔵施設内にはありますが、これらについても、こちらの記事で解説しています。

まとめ

今回は、中間貯蔵施設の全体像、特に大きさ、その保管の対象としている土や廃棄物、保管期限、区域内にある主な施設について解説しました。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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