(具体的な手法について解説)除染で発生した土の減容化や再生利用について(その2)

除染、特定廃棄物の処理

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

除染で発生した土の減容化や再生利用について、まず、こちらの記事で、その現状や、取組が進められている背景について解説しました。

その中で、除染で発生した土の量が非常に多いことや、その放射能濃度は、おおよそ4分の3が、一定の条件下で再生利用可能と見込まれている、ということをお話ししました。

今回は、特に技術的観点から、その具体的な進め方や、方法について解説したいと思います。

つまり、今回は、

・ 除染で発生した土の減容化って、具体的にどのように進められているの?
・ 除染で発生した土の再生利用って、具体的にどのように進められているの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (具体的な手法について解説)除染で発生した土の減容化や再生利用について(その2)
  2. 除染で発生した土の減容化の具体的な手法とは
    • 分級
    • 焼成
  3. 除染で発生した土の再生利用の具体的な手法とは
    • 農地造成における盛土
    • 道路盛土
  4. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(具体的な手法について解説)除染で発生した土の減容化や再生利用について(その2)

前回、こちらの記事で、除染で発生した土や廃棄物の現状や、その減容化や再生利用に関する取組が進められている背景について解説しました。

以下のパートでは、その具体的な取組の進め方について、いずれもまだ実証事業が実施されている段階ですが、減容化と再生利用に分けてそれぞれ解説したいと思います。

除染で発生した土の減容化の具体的な手法とは

減容化とは、その字の通り、土や廃棄物の容積を減らすことです。

除染では、木、枝、葉、といった、燃える廃棄物も発生しますが、これらは基本的に焼却炉で焼却・減容され、灰として、中間貯蔵施設に輸送・保管されます(もしくは中間貯蔵施設の区域内に建設された焼却炉において焼却された後、保管されます)。

一方で、こちらの記事で解説したように、その大部分を占める土については、焼却炉で焼却しても、含まれる有機物が燃えることで多少の減容化は期待できますが、大きな減容は困難です。

そこで、以下のような、焼却炉での減容以外の処理方法、具体的には「濃縮」による減容を検討するための、実証事業が行われてきている訳です。

分級


濃縮のうち、一番有望視されているであろう方法が、この分級ではないかと思います。

これは、放射性セシウムが、粘土鉱物のような、比較的粒径が小さな粒子に吸着しやすい性質を利用したものです。

要するに、この除染で発生した土を、網目のついたふるいにかけて、大きい粒子と小さい粒子に分けて、小さい粒子のみを集めることで、少ない量の土で効率良く放射性セシウムを集めようとする手法です。

焼成


別の濃縮の方法として検討されているのが、焼成です。

これは、添加剤を加え、1,000℃以上の高温で、除染で発生した土を熱することで、土の結晶構造を変化させ、吸着している放射性セシウムを気化して回収する技術です。

上述の「分級」が、物理的に放射性セシウムを分離するのに対して、「焼成」は高温の環境下で、化学的に放射性セシウムを分離するイメージです。

ただ、どちらの技術についても、大規模な施設や、多くのエネルギーが必要になりますし、濃縮するということは、体積は減って、管理はしやすくなりますが、放射能濃度が高い廃棄物を管理することが必要になる、ということにも留意する必要があります。

その他にも検討されている技術はありますが、ここでは上記の代表的な技術のみ紹介しておきたいと思います。

より詳細に検討内容を知りたい方は、こちらのウェブサイトの、「中間貯蔵施設における除去土壌等の減容化技術等検討ワーキンググループ」の資料をご覧ください。

除染で発生した土の再生利用の具体的な手法とは


再生利用の具体的な進め方を上の図に簡単に示しました。

除染で発生した土のうち、8,000Bq/kg以下のものを、その用途に応じて品質調整し、それを、放射線防護や、流出防止などの観点から、それぞれの用途で用いられている土などで覆って、その上部などを利用する、というものです。

この「8,000Bq/kg以下」という放射能濃度は、その再生利用が行われる場所にいる作業者や利用者、そして周辺の人への追加的な被ばく線量が、年間1mSvを超えないように設定されています。

そして、この施設は、長期的かつ安定的な取組が期待できる、公的な機関によって基本的に管理されることが想定されています。

こうした基本的な考え方のもと、再生利用は進められていますが、現在は実証事業が行われている段階であり、以下で、その実証事業の内容をご紹介したいと思います。

農地造成における盛土

福島県の北部にある飯舘村の長泥地区、という場所では、除染で発生した土のうち、放射能濃度が5,000Bq/kg以下のものについて、必要な処理を行った後、農地の基盤として使用し、その上を、通常の耕作に用いられる土で覆って、稲などを栽培する実証事業が行われています。

その結果、収穫された作物中の放射能濃度は、市場への流通の基準である、100Bq/kgを大きく下回り、また、周囲の空間放射線量にも大きな変化は見られなかったことなどが報告されています。

より詳細な情報については、こちらのウェブサイトを参照ください。

道路盛土


もう一つが、中間貯蔵施設の区域内で行われている、道路盛土に関する実証事業です。

ここでは、除染で発生した土を、道路の中心部分にある「路体」、という部分に利用し、道路盛土の側面は通常の土で、そして上部は「路床」という、通常の道路建設に用いられる土などで覆っています。

また、実際の道路のように、道路の上部には車道と歩道が設けられていて、その上を、実際に車両を通行させることなどにより、その道路盛土の構造物としての安全性の確認が行われています。

現時点では、現場の作業者への追加被ばく線量が、1mSv以下であること、また、施工箇所の境界部の空間線量率は、盛土作業の前後で変化がないことなどが確認されており、引き続き、必要なモニタリングが行われていくことになっています。

より詳細な情報については、こちらのウェブサイトを参照ください。

まとめ

今回は、除染で発生した土に関して、減容化と再生利用それぞれについて、基礎的な技術開発や実証事業など、その具体的な進め方や、方法について解説しました。

次の記事では、除去土壌の減容化や再生利用に関する理解醸成や、今後の進め方についてご説明したいと思います。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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