(宇宙や大地からの影響についても解説)自然放射線について(その1)

放射線に関する基礎知識

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

こちらの記事でも少し触れていますが、私たちの身の回りには自然放射線が常に存在していて、その影響を受けています。

この記事では、まず、日本と世界全体における自然放射線からの被ばく量について整理した後、特に宇宙からの放射線による影響と、大地からの放射線による影響について詳しく説明したいと思います。

つまり、今回は、

・ 日本や世界の人たちは自然放射線からどのくらいの影響を受けているの?
・ 宇宙からの自然放射線ってどんなものなの?
・ 大地からの自然放射線ってどんなものなの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (宇宙や大地からの影響についても解説)自然放射線について(その1)
  2. 自然放射線からの影響
    • 日本における影響
    • 世界全体における影響
  3. 宇宙からの自然放射線による影響
  4. 大地からの自然放射線による影響
    • 世界における自然放射線が高い地域
  5. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(宇宙や大地からの影響についても解説)自然放射線について(その1)

まずは、自然放射線から受けている影響の全体像についてご説明した後、その中でも特に宇宙と大地から放出されている放射線による影響について詳細に解説したいと思います。

自然放射線からの影響

こちらの記事でも触れていますが、まずは、最新のデータに基づく、日本と世界全体における放射線による被ばく線量の状況を見てみましょう。

日本における影響


(出典:国連科学委員会(UNSCEAR)2008年報告 及び (公財)原子力安全研究協会「生活環境放射線(国民線量の算定)第3版 増補版」(2024年)より作成)

ー 宇宙からの放射線による影響:0.31mSv/y 
ー 大地からの放射線による影響:0.33mSv/y
ー ラドンやトロンから放出される放射線による影響:0.47mSv/y
ー 食品から放出される放射線による影響:0.99mSv/y
ー 医療被ばく:2.6mSv/y
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー 合計:4.7msV/y

続いて、世界全体における被ばく線量も見てみましょう。

世界全体における影響


(出典:国連科学委員会(UNSCEAR)2008年報告 及び (公財)原子力安全研究協会「生活環境放射線(国民線量の算定)第3版 増補版」(2024年)より作成)

ー 宇宙からの放射線による影響:0.39mSv/y 
ー 大地からの放射線による影響:0.48mSv/y
ー ラドンやトロンから放出される放射線による影響:1.26mSv/y
ー 食品から放出される放射線による影響:0.29mSv/y
ー 医療被ばく:0.59mSv/y
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー 合計:3.0mSv/y

日本と世界全体の被ばく線量を比較すると、まず一番大きな差があるのは(今回の記事のテーマではありませんが、)医療被ばくです。

これは、日本ではCT検査用の装置の設置台数が人口あたり世界トップクラスであり、また早期発見志向が強い文化があることから、国民が医療用放射線を受ける機会が多いことが理由の一つして挙げられるでしょう。

この背景には、労働安全衛生法により、従業員への年1回の健康診断が義務付けられていること、国民皆保険制度により医療費が他の国と比べて比較的低く抑えられていることなどもあると思います。

宇宙からの自然放射線による影響


それでは、医療被ばくを除いた、自然放射線からの影響について、各項目ごとにより詳細にそのメカニズムなどを解説していきたいと思います。

まずは宇宙からの放射線による影響です。

こちらの記事でも少し触れましたが、地球上には、宇宙から宇宙線が絶えず降り注いでいます。

宇宙線とは、宇宙から地球に降り注ぐ高エネルギーの粒子線のことで、陽子や電子などの荷電粒子で構成されています。

これらの宇宙線は地球の磁場や大気によって防がれ、直接地表に届くことはほとんどありませんが、空気中の窒素分子や酸素分子と衝突することで、ミューオン、中性子、ガンマ線などの二次宇宙線を生成し、これらが地上に到達しています。

大地からの自然放射線による影響


次に、大地から放出されている放射線について解説します。

これは、今から約46億年前に地球が誕生した際、地球の材料になった物質に、最初から放射性物質が含まれていたからです。

具体的には、超新星爆発の際に生成されたウラン、トリウム、カリウムなどの放射性同位体がその代表例です。

ウランとトリウムはそれぞれ約45億年、約140億年という長い半減期を持っていて、地熱の主要な供給源ともなっています。

こうした放射性物質が放出する放射線や、ウランとトリウムの壊変に伴って発生するラジウムなどが放出する放射線の影響を私たちが受けている、ということです。

世界における自然放射線が高い地域

大地からの自然放射線量は地域差が大きく、世界には、例えば以下のような、世界全体の平均である約0.48mSv/yよりも高い場所があります。

・ヤンジャン(中国):約2.3mSv/y
・オルヴィエート(イタリア):約3.4mSv/y
・ラムサール(イラン):約4.7mSv/y
・ケララ(インド):約9.2mSv/y
・アラシャ(ブラジル):約19.6mSv/y
(出典)国連原子放射線の影響に関する科学委員会(UNSCEAR)2008年報告書

これは、その地域を構成している土地の地質や鉱物組成によるところが大きく、例えば、花崗岩はウランやトリウムを比較的多く含むため、花崗岩が多い地域では周囲の放射線量は高くなります。

現在のところ、こうした自然放射線量が高い地域でも、そうでない地域と比較して、がんの発症率や死亡率の大きな増加は見られていません。

これは、まず被ばく線量そのものが、直ちに人体に影響を及ぼすような量ではないことや、放射線を一度に被ばくする場合と、総量が同じでも少しずつ被ばくする場合とでは、後者の方がその影響が小さいことが理由として考えられます。

まとめ

今回は、日本と、世界全体における、全体的な被ばく線量、そして、そのうち、宇宙から届く放射線と、大地から放出されている放射線による影響について解説しました。

次回は、残った、呼吸による影響と、食事による影響について解説をしたいと思います。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました