(仮設焼却/灰処理施設などについて解説)中間貯蔵施設について(その3)

除染、特定廃棄物の処理

写真出典:中間貯蔵工事情報センター(双葉工区仮設焼却施設及び仮設灰処理施設)

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

こちらの記事では中間貯蔵施設の全体像について解説し、また、前回の記事では、中間貯蔵施設内にある個別の施設、特に、「受入・分別施設」と「土壌貯蔵施設」について解説しました。

今回は、その続きとして、仮設焼却施設、仮設灰処理施設及び廃棄物貯蔵施設などについて解説したいと思います。

つまり、今回は、

・仮設焼却施設ってどんな施設なの?
・仮設灰処理施設ってどんな施設なの?
・廃棄物貯蔵施設ってどんな施設なの?
・中間貯蔵施設内には他にはどんな施設があるの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (仮設焼却/灰処理施設などについて解説)中間貯蔵施設について(その3)
  2. 仮設焼却施設及び仮設灰処理施設
  3. 廃棄物貯蔵施設
  4. その他の施設
    • 車両の待機場
    • スクリーニング施設
    • 技術実証施設
    • 情報センター
  5. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(仮設焼却/灰処理施設などについて解説)中間貯蔵施設について(その3)

こちらの記事でも解説したように、中間貯蔵施設の区域内には、仮設焼却施設や、仮設灰処理施設、そして、仮設灰処理施設で発生するばいじんを一時的に保管しておく廃棄物貯蔵施設があります。

以下のパートで、各施設について順番に説明していきたいと思います。

仮設焼却施設及び仮設灰処理施設

上の図が、可燃性の除染廃棄物などの焼却や発生した灰の処理工程になります。

まず焼却施設ですが、中間貯蔵施設の区域内には、仮設焼却施設は大熊町に1施設、双葉町に2施設あります。

焼却炉のタイプが異なっていて、大熊町の焼却炉と、双葉町の1つの焼却炉はストーカ炉、双葉町のもう一つの焼却炉はシャフト炉、となっています。

中間貯蔵施設の区域内にある仮設焼却施設では、除染で発生した、草や木などの可燃性の廃棄物が焼却され、発生した灰が仮設灰処理施設へ運搬されます。

正確には、仮設焼却施設の底部にたまる灰を主灰、集じん施設で捕捉される灰を飛灰(ばいじん)と言いますが、いずれの灰も仮設灰処理施設で処理されます。

なお、シャフト炉では主灰は発生せず、直接スラグが発生する仕組になっています。

仮設灰処理施設については、炉のタイプとしては回転溶融炉とコークスベッド炉がありますが、いずれも灰を高温化で溶かしてスラグを生成し、この過程で磁選機を使って金属類も回収されます。

ここで、中間貯蔵施設の敷地内外の両方から運搬されてきた焼却灰が処理されます。

仮設灰処理施設にも集じん施設が設置されており、ここで回収された飛灰(ばいじん)が以下に述べる廃棄物貯蔵施設で貯蔵されることになります。

また、仮設焼却施設、仮設灰処理施設のいずれにも放射能濃度等を24時間連続で監視する装置が設置されており、大気に放出されている放射能濃度等を常時監視しています。

廃棄物貯蔵施設


廃棄物貯蔵施設は、大熊町に1つ、双葉町に2つ設置されていて、上の図でも示しているように、仮設灰処理施設で発生した飛灰(ばいじん)を保管しています。

仮設焼却施設及び仮設灰処理施設で減容化することで、放射性物質を含む廃棄物の体積は大幅に減少し、管理はしやすくなりますが、その分、放射性物質が濃縮されるので、放射能濃度は高くなります。

その放射能濃度は1kgあたり数万から数十万ベクレルになることもあるため、コンリート製で、厚さが30cmある壁を持った建屋の中で、専用の鋼鉄製の容器に入れて、3〜4段に積み上げて貯蔵し、周囲に放射線による影響が及ばないようにしています。

可燃性の廃棄物については、現段階ではこれが最も減容化された状態で、この廃棄物貯蔵施設に貯蔵されている廃棄物の更なる処理方法については検討中です。

具体的には、飛灰洗浄に関する技術実証試験が現在行われています。

これは、放射性セシウムが土壌に対しては物理的、電気的に強い吸着を示すのに対して、飛灰に対する吸着力が弱く、比較的水に溶けやすい性質を利用して、更に濃縮、安定化しようとする技術です。

先ほども述べたように、濃縮すればするほど、放射能濃度は上がりますが、その分体積は小さくなるので、管理はしやすくなります。

どこまで濃縮するかは、コスト、時間、その先の処理方法など、色々な要素を考慮に入れて検討されていくものと思われます。

その他の施設

ここまでの説明で、中間貯蔵施設の敷地内にある主要な施設についてはほぼご説明させていただきましたが、この他にも例えば以下のような施設が設置されています。

車両の待機場


中間貯蔵施設への輸送量は2019〜2020年度ごろにピークを迎え、毎年およそ400万m3もの除去土壌等が中間貯蔵施設に搬入されていました。

当時の中間貯蔵施設への車両台数は1日あたり約3,000台になり、保管場や受入・分別施設で除去土壌等を積み降ろすのにトラックが順番待ちをしていました。

そうした車両の待機場が施設内にはいくつか設けられていました。

その後、輸送量は約240万m3(2021年度)、約80万m3(2022年度)、となり、それに伴って車両台数も減少しており、待機場に車両の列ができることもなくなっています。

スクリーニング施設

中間貯蔵施設の敷地内に入ってきた車両は汚染の検査をしてから退出することになっていますので、敷地内にいくつかのスクリーニング施設があります。

東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則(除染電離則)に基づき、GM管の計数値が13,000cpmを下回っていることを確認してから退出しています。

技術実証施設

また別の記事で解説しますが、こちらの記事でも解説したように、中間貯蔵施設に貯蔵されている除去土壌等は、2045年3月までに福島県外で最終処分されることとされており、その最終処分量を可能な限り減らすため、除去土壌等の減容化や再生利用のための技術開発が進められています。

中間貯蔵施設の敷地内には、このための技術実証施設が設置されており、具体的には、除去土壌の再生利用字の安全性や安定性などに関する実証試験を公募により行う施設や、仮設灰処理施設で発生する飛灰を洗浄し、溶出した放射性セシウムを吸着、安定化させる技術を実証する施設があります。

情報センター


正確には中間貯蔵施設の敷地外にありますが、中間貯蔵施設事業に関する情報発信などを行う中間貯蔵施設工事情報センターがあります。

ここでは中間貯蔵施設を現地見学できるツアーも定期的に開催しているようなので、ご関心のある方は参加されるとされると良いかと思います。

まとめ

今回は、中間貯蔵施設における個別の施設として、残った仮設焼却施設、仮設灰処理施設、廃棄物貯蔵施設について解説し、また、その他の施設として車両の待機場やスクリーニング施設、技術実証施設、情報センターを簡単に紹介しました。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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