こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
今日は、
・放射線にはどのような種類がありますか?
・アルファ線、ベータ線、ガンマ線とは、具体的にどのような放射線なのですか?
こういった疑問に答えます。
○本記事の内容
- 放射線の種類とその性質について(その1)
- 放射線の種類
- アルファ線
- ベータ線
- ガンマ線
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
放射線の種類とその性質について(その1)
放射線の種類については、以前にこちらの記事で解説しましたが、今回の記事では、その内、特に本ブログが対象としている、原子力発電所の事故等の後に環境汚染が生じてしまった場合に、特に留意したい放射線を取り上げ、その性質について解説したいと思います。
放射線の種類
こちらの記事で解説したとおり、放射線は大きく「電離放射線」と「非電離放射線」に分類されます。
非電離放射線は、電離作用(軌道電子を弾き出す現象)のない電磁波で、可視光線、赤外線、電波などがその具体例です。
電離放射線は、電離作用がある電磁波や粒子線で、あまりに多くの電離放射線を被ばくすると、確定的影響や確率的影響(こちらの記事をご参照ください)といった、人体への悪影響が現れることになります。
今回の記事と及びその後の記事では、先ほども述べたように、電離放射線のうち、原子力発電所の事故等の後に環境汚染が生じてしまった場合に、特に留意したい3つの放射線(アルファ線、ベータ線、ガンマ線)を取り上げ、その性質について詳細に解説していきたいと思います。
アルファ線
アルファ崩壊によって放出される、陽子2個及び中性子2個から構成される粒子(=ヘリウム原子の原子核)のことをアルファ粒子と言い、その粒子の流れのことを、アルファ線と言います。
アルファ粒子には、陽子が2個あって、電子はありませんので、アルファ線は、正の電荷を持つ荷電粒子線です。
ちなみに、アルファ線が放出されると、元々の原子については、陽子が2個減少するので、原子番号も2減少して、別の種類の原子になります。
また、中性子も2個減少するので、陽子の2個と合わせて、質量数は4減少します。
例えば、原子番号が88のラジウム226がアルファ崩壊により、アルファ線を放出すると、原子番号が86のラドン222になります。
このアルファ粒子は、蛍光物質を励起する性質があるため、かつては、ごく微量のラジウムが時計の夜光塗料として使用され、ラジウムを時計に塗っていた女性工場労働者達に健康被害が生じたこともありましたが、現在では、より安全な物質に置き換わっています。
参考:Wikipedia(ラジウム・ガールズ)
ベータ線
ベータ崩壊によって放出される、電子または陽電子のことをベータ粒子と言い、その粒子の流れのことをベータ線、と言います。
電子は負の電荷を持っており、電子が放出されると、原子番号が1増加します。
これは、中性子が電子を放出することで陽子に変化し、陽子数が1増加するためです。
また、陽電子は正の電荷を持っており、陽電子が放出されると、原子番号が1減少します。
これは、陽子が陽電子を放出することで中性子に変化し、陽子数が1減少するためです。
ただ、陽子数と中性子数の合計は変化しないので、質量数は変化しません。
例えば、原子番号が53のヨウ素131がベータ崩壊により、電子という形でベータ線を放出すると、原子番号が54のキセノン131になります。
このヨウ素は、甲状腺に集まりやすいという性質を持っており、これを利用して、ヨウ素131が放出するベータ線は、甲状腺がんの治療にも利用されています。
ガンマ線
ガンマ崩壊によって放出される電磁波のことをガンマ線と言います。
ガンマ線は、アルファ線やガンマ線とは異なり、電荷を有しておらず、電磁波ですので、電界と磁界が相互に作用しながら空間を移動していきます。
なお、ガンマ線を放出しても、陽子数も、中性子数も増減しないことから、原子番号も、質量数も変化しません。
ガンマ線を放出する放射性物質の事例としては、コバルトがあり、原子番号が27のコバルト60が、ベータ崩壊により、ベータ線を放出して、ニッケル60になった後、更にガンマ崩壊により、余剰のエネルギーをガンマ線として放出します。
このコバルト60の、2段階の壊変により放出されるガンマ線は、その生物に与える影響を利用して、例えば、農薬や薬剤の代替手段として、食品に照射することで、殺虫や殺菌を行い、食品の保存期間を延長することなどに利用されています。
まとめ
今日は、数多くの種類がある放射線のうち、特に原子力発電所の事故など、不測の事態が発生し、周辺の環境が汚染された場合などに特に留意したい3つの放射線:アルファ線、ベータ線、ガンマ線について、その概要と、性質、そしてその用途について簡単に説明しました。
ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
日本語版
英語版
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今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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