(変遷や定義をおさらいしましょう)帰還困難区域について(その1)

除染、特定廃棄物の処理

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

以前に、こちらの記事こちらの記事で、福島第一原子力発電所の事故による避難指示について解説した際、帰還困難区域についても簡単に言及しました。

居住制限区域と避難指示解除準備区域における避難指示は、2020年3月までに解除されており、現時点において、避難指示が出されているのは帰還困難区域のみとなっています。

ここからは数回に渡って、帰還困難区域が設定された経緯と、帰還困難区域における取組、今後の課題などについて解説したいと思います。

まず、初回は、おさらいとして、帰還困難区域の設置までの経緯と、その変遷、具体的な定義について解説したいと思います。

つまり、今回は、

・帰還困難区域の避難指示はいつ出されて、どのように変わっていったの?
・帰還困難区域の定義は?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (変遷や定義をおさらいしましょう)帰還困難区域について(その1)
  2. 帰還困難区域の変遷
  3. 帰還困難区域の定義
  4. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(変遷や定義をおさらいしましょう)帰還困難区域について(その1)

こちらの記事こちらの記事で解説したとおり、福島第一原子力発電所の事故による避難指示は、居住制限区域と避難指示解除準備区域については、2020年3月までにその避難指示は解除されており、現時点において、避難指示が出されているのは帰還困難区域のみとなっています。

以下でその経緯、変遷や、その具体的な定義について解説していきたいと思います。

帰還困難区域の変遷


↑ 2011年3月11日

福島第一原子力発電所の事故に伴う避難指示は、震災の当日、つまり、2011年3月11日に出され、当初は、福島第一原子力発電所から半径3km以内の地域に避難指示、半径3km〜10kmの地域に屋内退避指示が出されました。


↑ 2011年9月30日

その後、モニタリングなどによって、事故に伴って、環境中に放出された放射性物質による汚染の状況が少しずつ明らかになるにつれて、避難指示区域も徐々に広がり、2011年9月末時点では、福島第一原子力発電所から半径20km以内の警戒区域に加え、事故後1年間の積算線量が20mSvを超える、可能性がある区域として「計画的避難区域」が、また、屋内退避指示区域としていた地域をベースに、「緊急時避難準備区域」が設定されました。

さらに、これらの区域以外でも、事故後1年間の積算線量が20mSvを超える可能性がある地点が存在することが分かってきたため、その地点ごとに「特定避難勧奨地点」が設定され、避難などの支援が行われました。

この頃が、避難指示などの区域としては一番広い時期で、特定避難勧奨地点を除けば、12市町村に及んでいました。


↑ 2013年8月8日

その後、地域の空間線量率などに関する詳細な調査や、地元自治体との調整も踏まえ、約2年をかけて、避難指示などに関する区域の再編が行われ、それまでの「警戒区域」「計画的避難区域」「緊急時避難準備区域」は、2013年8月までに「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」へと再編されていきました。

この再編の中で、「帰還困難区域」が初めて登場するわけですが、この「帰還困難区域」とは一体どのような区域として定義されたのでしょうか。

帰還困難区域の定義

こちらの記事でも解説しましたが、再編後の避難指示区域について、ポイントに絞ってまとめると、下の表のようになります。

帰還困難区域は、5年間を経過しても、年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがあり、かつ、当時、50mSvを超える地域として定義されました。

その運用については、バリケードの設置などにより、避難が徹底されましたが、申請して、許可されれば、住民の一時的な立入も認められてきました。

帰還困難区域の近くを車両で通ったことがある方の中には、道路や住宅の前にバリケードが設置されていたり、警備員のいるゲートがあることを記憶されている方もいるかもしれません。

被ばく線量区域の運用例
帰還困難区域5年を経過しても20mSv/yを下回らないおそれ
50mSv/yを超える
避難の徹底(バリケードの設置等)
ただし、スクリーニングの確実な実施、個人線量管理等を徹底した上で、例外的に住民の一時立入も認める
除染やインフラ復旧については、モデル事業等の結果を踏まえ、方向性を検討
居住制限区域現時点で20mSv/yを超えるおそれ原則避難
住民の一時帰宅(宿泊は禁止)、通過交通、公共目的の立入(インフラ復旧、防災目的)等を認める
避難指示解除準備区域20mSv/y以下となることが確実原則避難
住民の一時帰宅(宿泊は禁止)、通過交通、公共目的の立入(インフラ復旧、防災目的)等を認める
製造業、営農の再開を柔軟に認める
一時立入の際のスクリーニングは不要

まとめ

今回は、まず、福島第一原子力発電所の事故を受けた避難指示の発出から、その後の再編について説明し、帰還困難区域がどのようにして設定されたか、その経緯を説明しました。

また、帰還困難区域の具体的な定義や、その運用方法についてもおさらいしました。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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