除染特別地域と汚染状況重点調査地域について

除染、特定廃棄物の処理

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

今日は、

・除染は、どのような役割分担に基づいて、誰が主体となって行われたの?
・「除染特別地域」「汚染状況重点調査地域」ってどのような地域なの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. 除染特別地域と汚染状況重点調査地域について
  2. 除染の実施主体に関する基本的な考え方
  3. 除染特別地域
  4. 汚染状況重点調査地域
  5. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

除染特別地域と汚染状況重点調査地域について


(出典)環境省ホームページ(2023年8月3日アクセス)

まずは、二つの地域の場所から確認してみましょう。

下の地図中、除染特別地域は、オレンジ色の線で囲まれた地域です。

地域内で灰色(帰還困難区域)や青色(特定復興再生拠点区域)もありますが、これも除染特別地域に含まれています。

福島県内にあって、福島第一原子力発電所のごく近傍に位置していることが分かります。

一方、汚染状況重点調査地域は、それ以外の地域で、黄緑や黄色で着色されている地域です。

北は岩手県、宮城県、そして、福島県内の除染特別地域以外の地域、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県、埼玉県に分布していることが分かります。

黄緑はその時点で、依然として指定されている地域、黄色は過去に指定されていたが、現在では指定を解除された地域、ということになります。

除染の実施主体に関する基本的な考え方

それでは、除染特別地域と汚染状況重点調査地域は、どのような考え方に基づいて地域分けされているのでしょうか。

まず、除染特別地域は、当該地域を設定した時の避難指示区域(元の警戒区域及び計画的避難区域)とほぼ一致していることを抑えておきましょう(楢葉町の一部のみ、避難指示区域でなかった箇所も除染特別地域になっていますが、それ以外は一致しています)。

この地域については、福島第一原子力発電所の事故によって住民もさることながら、行政機能も合わせて移転を余儀なくされた地域です。

このことから、地元市町村が除染特別地域において除染事業を行う実現可能性はかなり低かったと言えます。

これに加えて、原子力行政を推進してきた国の社会的責任も考慮して、除染特別地域では、国(特に環境省)が除染事業を担当しています。

一方、汚染状況重点調査地域では、地域の事情に精通している地元の市町村が除染事業を担当し、国が技術的、財政的な支援を行うこととされています。

なお、福島第一原子力発電所を運転してきた東京電力については、除染事業の直接の実施者とはなりませんでしたが、これは、福島第一原子力発電所の廃炉作業等に人員をかける必要があること、放射性物質による汚染が東北地方から関東地方にかけて広がっており、一つの会社が担当するにはあまりに広範囲だったため、ことなどが理由として挙げられます。

この役割分担の在り方については、事故当初も色々と議論、意見、経緯がありましたが、これについては、また機会があればご説明したいと思います。

それぞれの地域のより詳細な情報について、以下に説明したいと思います。

除染特別地域


除染特別地域については、既に述べたように、福島第一原子力発電所の近傍にあり、長らく11市町村(大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、楢葉町、川内村、田村市、葛尾村、南相馬市、飯舘村、川俣町)がその指定を受けてきました。

この内、田村市については、市内にあった汚染状況重点調査地域と合わせて、2022年3月にその指定が解除され、2023年8月時点では10市町村となっています。

これらの市町村では、指定後に避難指示が解除された市町村でも、国(主に環境省)により、必要な除染事業(発生した土や廃棄物の管理を含む)が行われてきました(除染の具体的な工程については、こちらの記事をご覧ください)。

除染特別地域における面的な除染については、帰還困難区域を除いて2017年3月末までに終了しており、その後はモニタリングや、必要なフォローアップの除染が行われています。

また、現在は、帰還困難区域内における特定復興再生拠点区域の整備が行われているところで、当該区域では、2023年5月までに全ての避難指示が解除されました。

特定復興再生拠点区域を含めた、帰還困難区域における取組については、また別の記事で解説したいと思います。

また、依然として、帰還困難区域における、特定復興再生拠点区域以外の地域における今後の方針が、現在の課題として残っています。

汚染状況重点調査地域


汚染状況重点調査地域は、除染特別地域と比べると、福島第一原子力発電所からは遠い地域に分布しており、既に述べたように、北は岩手県、南は埼玉県や千葉県にまであります。

汚染状況重点調査地域は基本的に市町村単位で指定されますが、田村市、川俣町、川内村、南相馬市については、除染特別地域と汚染状況重点調査地域の両方の地域が同一市町村内にあります(田村市については2022年3月に指定解除)。

この汚染状況重点調査地域の指定については、その根拠法となっている放射性物質汚染対処特措法に、0.23μSv/h以上の空間線量率を有する地域があって、更に重点的な調査が必要な地域とされていて、関係する自治体の意見を聞いて指定することとされています。

この0.23μSv/hという空間線量率については、また別途解説をしたいと思います。

汚染状況重点調査地域における面的な除染については、2018年3月末までに終了しており、その後は、除染特別地域と同様、モニタリングや、必要なフォローアップの除染が行われています。

ちなみに、2012年1月に両地域の根拠法となっている放射性物質汚染対処特措法が完全施行された際、その数は102で、その後最大104市町村になりましたが、除染の進捗や時間経過などにより空間線量率が低減したことなどを受けて、徐々に指定が解除されており、2023年3月末時点で69となっています(出典:除染情報サイト)。

まとめ

今回は、除染特別地域と汚染状況重点調査地域について、その役割分担に関する基本的な考え方や、それぞれの地域の概要や現状について解説しました。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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