(6つの工程について説明します)除染の工程について

除染、特定廃棄物の処理

写真出典:除染アーカイブサイト
こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

こちらの記事では、除染の目的や手法に関する基本的な考え方について説明しましたが、今回は、

・除染って具体的にどのように行われているの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (6つの工程について説明します)除染の工程について
    • 土地、建物等の調査
    • 事前の放射性モニタリングなど
    • 除染計画など
    • 同意取得
    • 除染
    • 事後の放射性モニタリングなど
  2. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(6つの工程について説明します)除染の工程について


さらに細分化することも可能ですが、今回は以下の主な6つの工程について説明したいと思います。これで、除染の大まかな流れが掴めるかと思います。

土地、建物等の調査


まずは、除染を行うにあたり、その対象となる土地や建物などに立ち入るため、地権者や関係人を特定する作業から始まります。

住居などがその場所にあって、そこに住民がいる場合には特定しやすいかもしれませんが、当然、住居以外の、例えば農地のような場所も除染の対象になります。

農地は、耕作していれば、まだ特定できる可能性は高いですが、長年耕作されていない場合や、また、森林など、さらにその境界や所有者の特定がさらに困難になる可能性の高い土地もあります。

また、除染は原子力発電所の事故に関連して行われるものですので、住民の方が避難などを余儀なくされ、その場所に住んでない場合もあります。

そこで、電話や、登記情報の確認などを通じて、一つずつ所有者や関係人を特定し、また、後に記載する正式な同意取得に先立って、除染事業などについて説明する機会としていたようです。

事前の放射性モニタリングなど


土地の所有者や関係人が特定でき、調査に関する了解が得られたら、次は実際に現地で、空間線量率の測定などによる、事前のモニタリングや、その他除染の実施に必要な作業を行います。

なぜ、事前にこうした作業を行う必要があるのでしょうか。

ここでは、以下の3点について説明しておきたいと思います。

・除染箇所や除染手法の検討
・除染効果の評価
・除染対象物の状態等の確認

除染箇所や除染手法の検討

除染は、放射線防護に関する対策の一つですので、当然、その実施に当たっては、放射線防護の原則に則って行われる必要があります(放射線防護の原則についてはこちらの記事をご覧ください)。

そのためには、除染対象となる箇所の汚染状況の把握し、その状況に応じた除染の手法を適用することが重要になります(除染に関するこちらの記事もご参照ください)。

被ばく線量を低減させつつ、発生する廃棄物等の管理や処分方法、社会的受容性なども考慮しながら手法を設定するため、まずは現場の状況を知ることが不可欠になります。

除染効果の評価

除染作業を実施した後には、必ず、その効果を評価する必要があります。

その評価方法は様々ありますが、広範囲における環境汚染に対応した除染の効果を評価する場合、サーベイメータを使用して、地上から一定程度の距離の空間(例:1cm、50cm、1m)の空間線量率を測定するのが通例です。

実際の現場では、空間線量率は、測定場所や方向が少しズレると大きな変化となって現れますので、同じ場所で、同じ方向で、地上から同じ高さで・・・といった具合に、除染の前後の測定に関して、如何に条件を揃えるか、が重要なポイントになります。

除染対象物の状態等の確認

空間線量率の測定など、放射線防護の観点からの作業だけではなく、土木作業の観点からの作業も必要になります。

その重要な例の一つが、除染対象物の状態等の確認です。

除染の手法の選定に当たっては、対象物の材質や、経年劣化状況、破損状況なども考慮する必要がありますし、また、除染作業終了後の、所有者との不要なトラブルなども避けるため、事前に状態を良く確認し、記録をつけて、必要に応じて所有者の確認をとっておく事が必要になります。

除染計画など

事前のモニタリングなどが終了したら、具体的な計画づくりの段階になります。

調査結果を踏まえて、建物の損壊状況、具体的な除染の対象、手法などを示した、全体計画を策定します。

除染事業は、除染対象となる個別の住宅等の施設もさることながら、行政区などの一定程度の範囲の地域、市町村レベル、都道府県レベル、国全体レベルなど、様々な範囲で検討がされますので、お互いに調整を図りながら進めていくことが必要となります。

同意取得


除染計画の策定が終了すると、住民などに対して、除染対象物や除染方法などについて、極力現地において説明を行います。

この際、住民からは除染して欲しいものや、して欲しくないものなど、詳細な要望が寄せられることもあるので、必要に応じて協議、確認を行います。

避難指示などの影響で、現地において立会ができない場合には、電話で説明を行ったり、避難先まで行って説明を行いました。

また、相続などの関係で、地権者の所在が不明な場合には、除染方法や除染場所を官報に掲載して一定期間確認する、といった手法も取られました。

除染


写真出典:除染アーカイブサイト

仮に、同意が取得できた場合には、実際の除染作業が始まります。

ただ、少し言及しましたが、除染は、基本的に行政区などの一定程度のまとまりを持った地域や範囲で行われますので、同意が得られた直後に実施すると言うよりは、行政区などで全体として一定程度の合意が得られた後に開始される、と言うイメージです。

除染手法はその対象物ごとに大きく変わってきますので、詳細については、必要に応じて、また別途説明したいと思います。

事後の放射性モニタリングなど


写真出典:除染アーカイブサイト

除染作業が一旦終了したら、その効果を確認するため、まず、事後の放射性モニタリングを実施します。

除染作業を実施した後には、必ず、その効果を評価する必要があります。

「除染効果の評価」の項目で示したように、広範囲における環境汚染に対応した除染の効果を評価する場合、通常は、サーベイメータを使用して、地上から一定程度の距離の空間(例:1cm、50cm、1m)の空間線量率を測定して、除染実施前後での空間線量率の低減状況を評価し、その結果は、後日、地権者等に報告をします。

そして、場合によっては、その効果が維持されていることを確認するために、除染の実施から一定期間が経過した後に、同じ場所で再度測定を行います。

これは、傾斜がある場所などでは、風雨などの影響などで、その法面の下の部分に放射性物質が、土壌などとともに移動してくることがあるからです。

除染の効果が維持されていない、などの一定の条件を満たす場合には、再度除染を実施する場合もありますが、これについては、また別途解説したいと思います。

まとめ

今回は、除染事業に関連して、以下の6つの工程について説明をしました。

・土地、建物等の調査
・事前の放射性モニタリングなど
・除染計画など
・同意取得
・除染
・事後の放射性モニタリングなど

除染作業自体は、大規模な土木工事のような他の公共事業と比べると、高度な技術が必要という訳ではありませんが、原子力発電所の事故後の対応ということもあり、多種多様な関係者が関わる、社会性の強い事業のように思えます。

それだけに、非常に多くの関係者の理解のもとに進められている事業、という側面があると思います。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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