こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
こちらの記事では、福島県以外の県で、どのように除染が行われてきたかを解説し、その除染で発生した土壌がどのように保管されているかをご説明しました。
また、こちらの記事では、福島県外で実施された、除去土壌の処分に関する実証事業の概要について解説しました。
今回の記事では、その実証事業に基づいて策定された、除去土壌の処分に関する基準、そして今後の展望についてお話ししたいと思います。
つまり、今回は、
・ 除去土壌の処分基準ってどんなものなの?
・ 福島県以外の県の除去土壌って今後どのように処分されていくの?
こういった疑問に答えます。
○本記事の内容
- (処分基準と今後の見通しについて解説)福島県外で発生した除去土壌の処分について(その3)
- 福島県外における除去土壌の処分基準について
- 公共の水域及び地下水の汚染を生じさせるおそれの有無の判定
- 除去土壌の飛散・流出の防止
- 生活環境の保全
- 周囲の囲い及び表示
- 敷地境界における空間線量率の測定(モニタリング)
- 記録及び図面の作成と保存
- 開口部の閉鎖(埋立終了時の措置)
- その他留意事項
- 今後の見通しについて
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
(処分基準と今後の見通しについて解説)福島県外で発生した除去土壌の処分について(その3)
まず、福島県外における除去土壌の処分基準について解説した後に、除去土壌の処分に関する今後の見通しについて解説したいと思います。
福島県外における除去土壌の処分基準について
福島県外における除去土壌の処分基準については、実証事業の結果も踏まえ、2025年1月の第11回検討チーム会合と、2025年2月の第22回環境回復検討会で承認され、その後パブリックコメントを経て、2025年3月に他のガイドライン等とともに公表されました(報道発表資料はこちら)。
現在は、こちらの環境省ホームページで、その基準を解説した埋立処分に係るガイドラインを確認することができます。
この処分基準のうち、以下で主なポイントについて見ていきましょう。
公共の水域及び地下水の汚染を生じさせるおそれの有無の判定
こちらの記事でも解説した試験施工でも示されているように、除去土壌に含まれる放射性セシウムは土粒子に強く吸着されやすく、水に溶け出しにくい性質があることが分かっています。
特に福島県外での除去土壌は放射能濃度が比較的低く、溶出による地下水や公共用水域への移行リスクは極めて低いと考えられます。
ただし、例外的に放射性セシウム濃度が概ね10万Bq/kgを越える場合(ちなみに、福島県外の除去土壌の放射性セシウムの放射能濃度の平均値は約730Bq/kg)や除染廃棄物から分別した場合等に、放射性セシウムの溶出試験により判定することとしています。
除去土壌の飛散・流出の防止
除去土壌の埋立作業では、風や雨などにより土壌が外部へ飛散・流出しないように留意することが必要となります。
具体的には、袋や容器から除去土壌を取り出す際は地表近くで静かに行い、例えば、風が強い日など、粉じんが発生しやすい場合には散水したり、埋立場所をシートで覆うなどの養生を行うこととしています。
生活環境の保全
埋立処分に伴う作業が周辺住民の生活環境に悪影響を与えないよう、騒音・振動・悪臭などについて適切な管理が求められます。
具体的には、作業場周辺の定期清掃を行い、土砂の落下や粉じんの発生を防止したり、低騒音型や低振動型の建設機械を使用して、騒音等の対策を講じることとされています。
周囲の囲い及び表示

埋立地では、関係者以外の誤った立入や、意図しない除去土壌の掘り起こしを防ぐための囲いを設置することが求められます。
囲いには、フェンス・柵・ロープなどによる囲いを設置したり、既存の囲いを利用することも考えられます。
また、除去土壌の埋立場所であることや、埋立場所の管理者の連絡先を記載した表示をすること求められます。
埋立作業中や作業終了後に、空間線量率のモニタリング結果を掲示し、住民の理解醸成に活用することもできるとされています。
敷地境界における空間線量率の測定(モニタリング)

除去土壌の埋立作業中及び維持管理中の状況と比較するため、除去土壌の搬入前に、その場所の空間線量率を測定し、状況を知っておくことが重要です。
そして、除去土壌の搬入や埋立作業に伴う周囲への影響が無いことを確認するため、敷地境界等の空間線量率を定期的(基本的に週1回)に測定し、外部への影響がないことを確認する必要があります。
埋立作業終了後も、覆土の点検等の維持管理作業と合わせて、適切な頻度で測定を継続し(埋立前からの変動がなければ年1回程度)、周囲への影響がないことをることが求められます。
この際、リスクコミュニケーションの一環として、地域の参画を得て空間線量率の測定を行うことは、この課題を自分のこととして捉え、地域の理解を深めてもらうために非常に有用な手法と言えると思います。
記録及び図面の作成と保存

除去土壌の処分の際のトレーサビリティの確保や、埋立場所の維持管理終了について判断する際に必要となるため、埋立前、埋立作業中、埋立作業終了後の状況について、写真等も含め、例えば以下のような情報を記録し、維持管理が終了するまでの間、保存することが求められます。
・埋め立てた位置を示す図面
・埋め立てられた除去土壌量
・埋立場所の維持管理に当たって行った測定、点検、検査等の内容
これらは、災害の発生時や、やむを得ない土地利用変更時の安全確認にも活用でき得るものですし、場合によっては、処分場所の管理者が交代することも考えられることから、長期的な管理を行う上で重要な情報源となると考えられます。
開口部の閉鎖(埋立終了時の措置)
埋立作業完了後には、除去土壌の飛散流出防止等のため、開口部を適切に閉鎖し、長期の安定性を確保する必要があります。
具体的には、埋め立てた区域に厚さ30cm以上の覆土を施すこととされています。
また、埋立場所によっては、人による意図しない土地の改変、動物の侵入による掘り起こし、沈下が想定される場合があることから、これに対応するため、覆土厚の追加などを行い、埋立地が将来にわたって安全に管理されるようにする必要があります。
その他留意事項

埋立処分に係るガイドラインでは、その他の留意事項として、以下の11項目を取り上げています。
1 地域とのコミュニケーション
2 埋立場所の立地の検討
3 雨水等の浸入の防止等
4 除去土壌の受入管理
5 除去土壌の放射性セシウム濃度の測定
6 埋立作業時の安全管理
7 埋立作業時の留意事項
8 電離則の対象となる除去土壌の取扱い
9 除染廃棄物から分別した土壌の取扱い
10 埋立場所への立入り等
11 有害物質への対応
この中には、個別のケースごとにその必要性を判断していく必要があるものもありますが、いずれも、除去土壌の処分を安全に行い、長期に渡って適切に管理していく上で重要なものです。
これに加えて、災害時等の異常事態が発生した場合の事前の連絡体制の整備や初動対応を事前に整理し、迅速に安全確保ができる状況にしておくことが、長期的な管理に不可欠なものとして記載されています。
今後の見通しについて
2025年3月にこの除去土壌の処分に関する埋立基準とガイドラインが公表されましたので、今後は、これらに基づいて実際に処分が進んでいくことが期待されます。
除去土壌の処分の先にあるのは汚染状況重点調査地域に指定解除だと思います。
こちらの記事でも触れましたが、これまで除去土壌の処分の基準がなかったことが、福島県外の汚染状況重点地域の指定解除が進んでこなかった一因でもあったような気がします。
法的な観点だけから見ると、福島県外の汚染状況重点調査地域に指定解除は、空間線量率の低減を持って判断される(0.23μSv/hを下回っているかどうか)と理解しています。
福島県内の指定解除が進んできている事実を見ると、福島県外の市町村でも、空間線量率はその要件を満たす程度に十分に低下していると考えられます。
しかし、除去土壌の処分は正に除染のプロセスの最終段階であり、この処分が完了しなければ指定解除できない、と各市町村が考えるのも至極当然のように思えます。
震災からまもなく15年近くが経過しようとしている(執筆時点)中で、この処分を基に、福島県外の市町村の指定解除が加速していくことが期待されます。
まとめ
今回は、まとめとして、2025年3月に設定された、福島県外における除去土壌の処分基準と、今後の処分の見通しについて解説しました。
この問題は、震災の直後から長年をかけて検討されてきた課題であり、紆余曲折を経てようやく処分基準が設定されました。
これをもとに、福島県外での除去土壌の処分が進み、汚染状況重点調査地域の解除が進むことを期待したいと思います。
ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
日本語版
(後日公開)
英語版
(後日公開)
本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。
今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。

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