(写真はイメージ)
こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
こちらの記事では、2つの特定廃棄物埋立処分施設の概要など、そして、こちらの記事では、特定廃棄物埋立処分施設のうち、旧フクシマエコテッククリーンセンターにおける、特定廃棄物の具体的な埋立処分方法や、浸出水の処理方法などをご説明しました。
今回は、その続きとして、もう一つの特定廃棄物埋立処分施設である、クリーンセンターふたばにおいて埋立処分される特定廃棄物の種類や、具体的な埋立方法、浸出水の処理方法などについて解説したいと思います。
つまり、今回は、
・クリーンセンターふたばではどのような廃棄物が埋立処分されているの?
・クリーンセンターふたばではどのように廃棄物を埋め立てているの?
・クリーンセンターふたばではどのように浸出水を処理しているの?
こういった疑問に答えます。
○本記事の内容
- (クリーンセンターふたばについて解説)特定廃棄物埋立処分施設について(その3)
- クリーンセンターふたばにおいて埋立処分する廃棄物の種類
- クリーンセンターふたばにおける廃棄物の埋立方法
- クリーンセンターふたばにおける浸出水の処理方法
- 特定廃棄物のその他の処理方法
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
(クリーンセンターふたばについて解説)特定廃棄物埋立処分施設について(その3)
上述したように、本記事では、2つある特定廃棄物埋立処分施設のうち、クリーンセンターふたばについて、主に解説していきます。
クリーンセンターふたばにおいて埋立処分する廃棄物の種類
この地域においては、こちらの記事でも解説したように、旧フクシマエコテッククリーンセンターにおける特定廃棄物の埋立処分が先行して行われていましたが、その他にも、廃棄物の処理について以下のような課題がありました。
・旧フクシマエコテッククリーンセンターにおける、双葉郡の生活ごみの埋立が2027年11月頃までとなっていて、その後の処理を担う施設が必要。
・双葉郡の復興に向けたインフラ整備等に伴って発生する廃棄物の処理先の確保が必要。
・旧フクシマエコテッククリーンセンターで埋立処分するのは帰還困難区域以外の特定廃棄物とされており、特定復興再生拠点区域において発生する特定廃棄物の処理先の確保が必要。
そこで、クリーンセンターふたばにおいては、以下の廃棄物を埋立処分されることになっています。
・双葉郡の生活ごみ(2027年11月頃以降)
・双葉郡において実施されるインフラ整備等の各種事業活動に伴って発生する廃棄物
・特定復興再生拠点区域において発生する特定廃棄物(10万Bq/kg以下のみ)
また、埋立期間は約10年間とされていますが、事業の進捗に応じて見直されることとされており、地元との調整を経て、2023年6月1日から、その運用が再開されたところです。
クリーンセンターふたばにおける廃棄物の埋立方法
(出典:環境省ウェブサイトより作成)
基本的な埋立に関する考え方は、上の図に示した通りですが、こちらの記事で解説した、旧フクシマエコテッククリーンセンターと同様、セメント固型化した廃棄物と、セメント固型化しない廃棄物を分けて埋め立てます。
更に具体的な埋立方法については、上の図に示した通りです。
これは、既存の廃棄物が埋め立てられていない2期の埋立地の様子ですが、具体的には、全面に遮水シートを敷いて、外部への浸出水の漏出などを防止しています(①)。
そこに、旧フクシマエコテッククリーンセンターと同様、廃棄物を収納容器に入れたまま積んでいきますが(②)、クリーンセンターふたばでは、セメント固型化しない場合でも、地盤改良型収納容器ではなく、角型収納容器を使用します。
そして、廃棄物を数段積み上げたら、その上に、不透水性の土壌層などを敷いて、万が一容器から放射性セシウムが漏れた場合でも、その放射性セシウムを土壌に吸着させるようにしています(③)。
そして、何段か、廃棄物を積んだら、再度不透水性の土壌層などを敷設し、更にその上に廃棄物を数段積む、そしてまた不透水性の土壌層などを敷設する、という作業を繰り返していきます(③)。
また、これも、旧フクシマエコテッククリーセンターと同様ですが、埋立作業を実施していない区画については、常に暫定的に表面をキャッピングシートで覆い、雨水の侵入を抑制することで、雨水と廃棄物との接触を減らし、浸出水処理施設で処理する水の量を低減させています(④)。
さらに、処分場の法面や、内部にガス抜き管を設置し、仮に、廃棄物中に含まれる有機物の発酵によって、可燃性のガスが発生した場合でも、ガスを大気中に放出し、処分場内に滞留しないようにしています(⑤)。
また、不透水性の土壌層などには勾配が設けられていて、雨水が入った場合、埋立地から外に浸出水が排出されるようになっています。
クリーンセンターふたばにおける浸出水の処理方法
ちなみに、埋立地内で発生した浸出水の処理方法は、旧フクシマエコテッククリーセンターと同様です。
まず、埋立地から排出された水は、浸出水の調整層に入った後(①)、さらに浸出水の処理施設へと送られます(②)。
ここで凝集、沈殿、ろ過などの処理を行って、有機物や重金属を除去します(③)。
浸出水処理施設で処理された水は、一旦、処理水の貯留槽において貯留されます(④)。
処理水の貯留槽の中の水については、その放射能濃度を測定し(⑤)、基準値以下であることを確認してから、環境中に放流します(⑥)。
万が一、処理水中の放射能濃度が基準値以上だった場合には、ゼオライト吸着塔において、放射性物質を吸着し(⑦)、再度放射能濃度を測定し、基準値を下回っていることを確認してから放流します(⑧)。
特定廃棄物のその他の処理方法
除染などから発生した土や廃棄物の処理について解説したこちらの記事、特定廃棄物そのものについて解説したこちらの記事、そして、特定廃棄物埋立処分施設に関するこれまでの記事(こちらの記事及びこちらの記事)をご覧いただければ、特定廃棄物の処理に関する全体像が見えてくるかと思います。
ただ、全ての特定廃棄物がこの埋立処分施設で処分されるわけではなく、その一部は基準に則ってリサイクルされるものもあります。
ここまでご説明してきたのは、いわゆる放射性物質汚染対処特措法に基づく処理ルートですが、具体的には廃棄物処理法や家電リサイクル法などの個別リサイクル法による廃棄物の処理も行われている、という状況です。
これについても、機会がありましたらご説明したいと思います。
まとめ
今回は、取りまとめとして、2つある特定廃棄物埋立処分施設のうち、クリーンセンターふたばについて説明しました。
「除染」という言葉に隠れて、あまり馴染みのないかもしれない特定廃棄物の処理ですが、津波がれきの処理や、解体家屋の処理など、被災地の更なる復興に向けて非常に重要な取組です。
特に帰還困難区域においては引き続き特定廃棄物が発生し、その処理も続いていきますので、その進捗に注目していきたいと思います。
ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
日本語版
英語版
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今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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