こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
皆さんは、放射線防護の世界にも重要な3つ基本的考え方、つまり原則があるのをご存じでしょうか。
今日は、その3つの原則について解説したいと思います。
つまり、
・放射線防護の三原則とは何か知りたい。
こういった疑問に答えます。
○本記事の内容
- (とても重要です)放射線防護の三原則について
- 正当化
- 最適化
- 線量限度
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
(とても重要です)放射線防護の三原則について
放射線防護に関する方針等を考える上で、全ての基本となるのが、以下の三原則になります。
・正当化
・最適化
・線量限度
以下に、それぞれの原則について順次説明していきたいと思います。
正当化
正当化の原則は、放射線を使う行為は、それによってもたらされる便益が、放射線の使用によるリスクを上回る場合にのみ認められる、という考え方です。
例えば、医療被ばくにおいて、健康診断などで沢山の被ばくをして、体の内部の様子が詳細に分かったとしても、仮にその被ばくによって健康に影響を生じてしまうようなことがあっては、正に本末転倒と言えるでしょう。
また、逆に、全く健康診断を受けず、その結果、放射線への被ばく量を極力小さくしたとしても、その結果病気の早期発見などができず、健康を損なってしまったとしたら、それも望ましい状況とは言えないでしょう。
つまり、放射線の利用には、メリットとデメリットがあり、そのメリットがデメリットを上回る範囲において利用しましょう、ということです。
これは計画被ばく状況における例ですが、この正当化の原則はその他の緊急時被ばく状況や現存被ばく状況においても適用されます(被ばく状況の種類については、こちらの記事をご覧ください)。
例えば、原子力発電所の事故などの緊急時において、その事故に対応する人は、通常時よりも多くの被ばくをする可能性がありますが、それにより、更なる事故の影響の拡大の未然防止や、人命救助ができる、という大きなメリットを得られる可能性もあります。
また、原子力発電所の事故後の、現存被ばく状況における除染活動については、放射性物質を身近な環境から取り除き、被ばく量を低減させることができる、というメリットがある一方で、過度な除染を行えば、二次的な災害や、生態系への悪影響などを及ぼす可能性もあります。
こうした、放射線に関する全ての活動について、それによって得られるメリットとデメリットを良く考慮した上で方針を決定しましょう、という考え方です。
最適化
最適化の原則は、前述した正当化の原則が成立する場合において、合理的に達成できる限り、できるだけ放射線からの被ばく量を低減させていきましょう、という考え方です。
この最適化の原則を達成するために用いられるのが、計画被ばく状況の公衆被ばくなどにおいて適用される「線量限度」や、緊急時被ばく状況や現存被ばく状況において適用される「参考レベル」です。
被ばく状況の分類については、こちらの記事もご覧ください。
なお、この「合理的に達成できる限り低く保つ」という考え方は、英文(As Low As Reasonably Achievable)の頭文字(ALARA)を取って、「アララの原則」と呼ばれることもあります。
被ばく線量はできる限り低く保つことが求められますが、正当化の原則でも、また、このALARAの原則でも取り入れられているように、放射線防護以外の要素も同時に考慮して、トータルとしてメリットがもたらされる必要がある、という点に留意が必要かと思います。
線量限度
線量限度は、管理対象となる線源からの被ばく線量を抑えるために定められる管理値のことで、計画被ばく状況において適用されます。
詳細については、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
放射線防護については、以下の3つの原則があります。
・正当化
・最適化
・線量限度
正当化とは、放射線を使う行為は、それによってもたらされる便益が、放射線の使用によるリスクを上回る場合にのみ認められる、という考え方です。
最適化の原則は、前述した正当化の原則が成立する場合において、合理的に達成できる限り、できるだけ放射線からの被ばく量を低減させていきましょう、という考え方です。
線量限度は、計画被ばく状況において適用される、管理対象となる線源からの被ばく線量を抑えるために定められる管理値のことです。
ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
日本語版
英語版
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今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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