(まずは背景から)除染で発生した土の減容化や再生利用について(その1)

除染、特定廃棄物の処理

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

これまで、こちらの記事では、除染で発生した土などの処理について、その処理フローなどについて解説しました。

また、こちらの記事こちらの記事こちらの記事こちらの記事では、福島県内の除染で発生した土や廃棄物などを一時的に保管している中間貯蔵施設について解説しました。

これらの記事の中でも解説しましたが、現在中間貯蔵施設で保管されている土などは、中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分することが法律で定められており、その実現のため、減容化や再生利用が進められています。

この記事では、その取組が進められている背景、現状などについて解説したいと思います。

つまり、今回は、

・ 福島県内の除染などで発生した土や廃棄物って、今どこにどれくらいあるの?
・ 除染で発生した土の減容化や再生利用って何?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (まずは背景から)除染で発生した土の減容化や再生利用について(その1)
  2. 除染で発生した土や廃棄物の量などについて
  3. 除染で発生した土の減容化や再生利用とは
    • 除染で発生した土や廃棄物の割合
    • 除染で発生した土の放射能濃度の分布
  4. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(まずは背景から)除染で発生した土の減容化や再生利用について(その1)

写真出典:除染アーカイブサイト

こちらの記事でも解説しましたが、福島県内で実施された除染で発生した土などについては、焼却施設で減容化したり、一時的に仮置場で保管した後に、中間貯蔵施設に輸送され、必要な処理が行われた後、保管されています。

同じ記事でも解説していますが、この処理フローは、福島県内と福島県以外の県とでは異なることに留意しましょう。

まずは、その発生した土や廃棄物の量などを解説し、その減容化や再生利用が進められている背景を解説していきたいと思います。

除染で発生した土や廃棄物の量などについて


写真出典:除染アーカイブサイト

その中間貯蔵施設に運び込まれる量は、帰還困難区域を除いて、1,400万m3、という推計もあり、これは東京ドームの約11杯分に相当する量です。

ちなみに、2024年3月末時点で、1,376万m3の土や廃棄物が既に輸送されていますが、これは帰還困難区域も含めた量です(最新の状況については、こちらのウェブサイトでご確認ください)。

なお、帰還困難区域については、こちらの記事こちらの記事こちらの記事もご参照ください。

そして、こちらの記事でも解説しましたが、重要なことは、これらの土や廃棄物は、2045年3月までに、福島県以外の場所において、最終処分を完了させることが法律で決まっている、ということです。

中間貯蔵施設の建設に当たっても、多くの交渉や決断があったことはこちらの記事などでも解説しましたが、これが最終処分、となると、その場所を見つけるのは、更に難しい問題になる可能性があります。

そこで、国は、その量を少しでも減らそうとする取組を進めている訳です。

以下の章では、その具体的な取組の内容について解説していきたいと思います。

除染で発生した土の減容化や再生利用とは

写真出典:除染アーカイブサイト

除染で発生した土や廃棄物のうち、廃棄物、というのは、主に、住宅や森林の除染などで発生した木、枝、葉などになりますが、これらは、焼却処理などによって、その体積を大きく減少させ、性状も安定化させることができます。

一方で、土については、その中には多少の有機物が含まれているため、焼却処理などを行うことによって、多少は減容化させることはできますが、その多くは可燃物ではないため、大きく減容化させることはできません。

まずは、その土と廃棄物の割合などについて以下で解説したいと思います。

除染で発生した土や廃棄物の割合


中間貯蔵施設に搬入した除去土壌等の割合(2023年3月末時点)
出典:中間貯蔵施設における除去土壌等の減容化技術等検討ワーキンググループ(第4回)

上の図は、中間貯蔵施設に、2023年3月末までに搬入された、約1,310万m3の、土壌やその他の廃棄物の割合を分析したものです。

土壌が、約1,231万m3で、全体の約94%を占め、可燃物が、約52万m3で、全体の約3.9%、その他の不燃物が約7万m3で、全体の約0.5%、焼却灰が約20万m3で、全体の約1.6%、となっています。

要するに、そのほとんどは土、ということです。

これらを、現在も行われているような、焼却などによる処理で減容化することは、とても難しい、ということがお分かりいただけるかと思います。

除染で発生した土の放射能濃度の分布


除去土壌の放射能濃度分布(2023年3月末時点)
出典:中間貯蔵施設における除去土壌等の減容化技術等検討ワーキンググループ(第4回)

そこで、焼却以外の方法を使った減容化や、再生利用、という方法が検討されている訳です。

このこと、特に再生利用が進められている点については、もう一つ理由があります。

上の図は、2023年3月末時点での、除染で発生した土の放射能濃度の分布を示したグラフで、放射能濃度は、除染を実施した場所の状況などによって異なっていて、様々なものが含まれています。

このうち、放射能濃度が、8,000Bq/kg以下の土壌については、国は、一定の条件下で再生利用可能であると考えており、これは全体の量の約4分の3に相当します。

時間の経過とともに、原子核の崩壊により放射能濃度は低減していきますので、もしこれらの土壌が安全に再生利用することができれば、最終処分される量を大幅に減らすことができます。

まとめ

今回は、除染で発生した土について、その現状や、減容化や再生利用が進められている背景などについて解説してきました。

次の記事では、その具体的な方法などについてご説明したいと思います。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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