写真出典:除染アーカイブサイト
こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
今日は、
・除染で発生した土や廃棄物はどのように処理されているの?
・福島県内と福島県以外ではどのように違うの?
こういった疑問に答えます。
○本記事の内容
- 除染で発生した土などの処理について
- 除染などで発生する土や廃棄物の種類
- 除染で発生する土や廃棄物
- 除染以外の事業で発生する廃棄物
- 福島県内における処理
- 福島県以外における処理
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
除染で発生した土などの処理について
写真出典:除染アーカイブサイト
除染で発生した土などについては、一般的な廃棄物処理と同様に、基本的には、「運搬」→「処理(中間処理、保管などを含む)」→「処分」という流れをたどります。
ただ、原子力発電所の運転に伴って発生するいわゆる「高レベル放射性廃棄物」などと比べると、放射能濃度はかなり低いとは言え、事故由来の放射性物質を含んでいることから、科学的視点からだけではなく、社会的受容なども考慮して、通常の廃棄物とは異なる方法で処理がなされています(または、なされようとしています)。
なお、以下で説明しますが、除染で発生した土などの処理方法については、福島県内とそれ以外の県とで異なっていますので、それぞれを分けて説明したいと思います。
除染などで発生する土や廃棄物の種類
まず、この除染事業の根拠となっている法律の一つである放射性物質汚染対処特措法(正式名称:平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法)においては、福島第一原子力発電所の事故に伴って環境中に放出された放射性物質による環境汚染に対応するための事業のうち、除染事業で発生する土などと、それ以外の事業で発生する廃棄物とを分けて考えています。
除染で発生する土や廃棄物
写真出典:除染アーカイブサイト
まず、「除染事業で発生する土など」についてですが、除染事業では、表土の削り取り、除草、森林における表面の枝葉の除去が基本的な作業になるので、発生するものは「土」と「枝や葉のような可燃性の廃棄物」の2種類とイメージすれば良いかと思います。
それ以外のがれきなどの大型の不燃物は、除染事業においては基本的に発生しません(が、どうしても少量は発生してしまいます)。
また、「土」とそれ以外の「廃棄物」も分けて考えられています。
これは、この放射性物質汚染対処特措法だけではなく、廃棄物処理法も含めた、日本の廃棄物処理全体に共通する考え方で、「土」は「廃棄物」には含まれません(ただし、泥状になると、汚泥となり、廃棄物に含まれてきます)。
除染以外の事業で発生する廃棄物
一方、除染以外の事業(例:ごみの焼却、下水処理)でもその活動の中で放射性物質を含んだ廃棄物が発生することがあります。
これらは、放射性物質汚染対処特措法において、大きくは「指定廃棄物」と「対策地域内廃棄物」という2種類の廃棄物に分類され、これらは「特定廃棄物」と定義されています。
「指定廃棄物」は放射能濃度が8,000Bq/kgを超えていて、環境大臣が指定したもの、そして、「対策地域内廃棄物」は汚染廃棄物対策地域内で発生した廃棄物、と定義されますが、特定廃棄物については、こちらの記事をご参照ください。
福島県内における処理
前述したように、除染で発生した土などの処理方法は、福島県内とそれ以外の県とで異なっていますので、分けて説明したいと思います。
福島県内については、上の図のような流れになります。
ただ、これはあくまで基本的な流れで、これによらない流れもあります。
まず、除染事業で発生した土や廃棄物は、仮置場に運搬されたり、仮設焼却炉などに運搬されて焼却・減容化されます。
何らかの理由で仮置場が確保できない場合には、仮置場が設置されるまでその除染現場において一時的に保管される場合もあります。
除染特別地域においては、原則として、仮置場が設置された後に除染が実施されたため、こうした事象は起こりませんでしたが、汚染状況重点調査地域の特に都市部においては、仮置場の確保が難しく、現場に長期間に渡って保管された事例もありました(除染特別地域及び汚染状況重点調査地域については、こちらの記事をご覧ください。)。
その後、これらの土や廃棄物は、中間貯蔵施設に輸送され、最終処分までの間、保管されています。
中間貯蔵施設については、その名の通り、一時的な保管場所で、施設内に保管されている土や廃棄物については、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外において最終処分することとなっています(中間貯蔵施設についてはこちらの記事、こちらの記事、こちらの記事、こちらの記事をご覧ください)。
一部の土や廃棄物については、実証事業などを通じて再生利用されてものもありますが、まだ大規模な実施という段階には至っていません。
これについても、また別の記事で解説したいと思います。
一方で、特定廃棄物についても、ほぼ同様の処理ルートをたどっています。
少し違うのは、一つは、これは、施設の構造と被ばく線量評価の結果、放射能濃度が100,000Bq/kgを超える廃棄物については、中間貯蔵施設において保管することになっていることです。
2つ目は、特定廃棄物埋立処分施設と呼ばれる施設が福島県内に2か所あり、こちらは特定廃棄物の最終処分のための施設となっている点です(特定廃棄物埋立処分施設については、こちらの記事、こちらの記事、こちらの記事をご覧ください。)。
また、一部の特定廃棄物については、既に再生利用がされています。
福島県以外における処理
福島県以外については、上の図のような流れになります。
ただ、これについても、あくまで基本的な流れで、これによらない流れもあります。
まず、除染事業で発生した土や廃棄物は、福島県内での処理と同様、仮置場に運搬されたり、仮設焼却炉などに運搬されて焼却・減容化されます。
福島県以外についても、何らかの理由で仮置場が確保できない場合には、仮置場が設置されるまでその除染現場において一時的に保管される場合もあります。
大きな違いとしては、中間貯蔵施設のような、その次の段階としての集中管理する施設がないということです。
これは、汚染の状況や除染の手法が福島県とそれ以外の県とで異なっていて、福島県以外の県においては、福島県内と比較すると、土や廃棄物の発生量が非常に少ないことが理由の一つですが、そのため、現時点においても、除染が行われた現場(例:住宅、学校、公園)の敷地内に穴を掘って保管されているケースなどがあります。
現在は、実証事業などを通じて、その具体的な処分方法が検討されているところです。
土以外の廃棄物については、指定廃棄物として指定されていない、8,000Bq/kg以下の廃棄物については、廃棄物処理法に基づく通常の方法で処理することが可能とされています。
一方、特定廃棄物については、対策地域内廃棄物に相当する廃棄物はありません(汚染廃棄物対策地域は福島県内にしかないため)。
指定廃棄物は発生しており、これらは、必要に応じて減容化され、発生した現場で管理されたり、他の場所で集中管理されています。
また、その次のステップとしては、宮城、栃木、千葉の各県においては、特に保管状況が逼迫しているとして、長期保管施設において保管されることとなっていますが、まだいずれの県においても、詳細調査の実施の目処が立っていません。
その間、保管体制の強化や、時間が経過し、放射能濃度が8,000Bq/kg以下に低下した指定廃棄物の指定の解除などにより対応しています。
まとめ
今回は、除染で発生した土などの処理について、特に発生する土や廃棄物の種類と、福島県内と福島県以外での処理方法の違いについて解説しました。
本記事の中で触れた、特定廃棄物、中間貯蔵施設、特定廃棄物埋立処分施設、除去土壌の再生利用に関する取組などについては、別の記事で詳細に解説していますので、そちらをご覧ください。
ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
日本語版
英語版
本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。
今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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