こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
今日は、
・「放射性物質」「放射能」「放射線」という言葉は良く聞くけど、その違いは何なのか、今更聞きにくいけど、具体的に知りたい。
こう言った疑問に答えます。
○本記事の内容
- (簡単解説)「放射性物質」「放射能」「放射線」の違いとは何か。
- 放射性物質とは
- 放射能とは
- 放射線とは
- 各用語の使い方
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
(簡単解説)「放射性物質」「放射能」「放射線」の違いとは何か。
ここでは、放射線が原子核の壊変によって放出されるケースを想定していますが、
簡単に言うと、
- 放射性物質=放射線を出す物質
- 放射能=放射線を出す能力
- 放射線=電離作用がある粒子線や電磁波
のことです。
それぞれについて、上の図に示した、「電球」と「ボクシング」も例にあげて、その違いをより詳細にイメージしてみましょう。
放射性物質とは
上述したように、放射性物質とは、放射線を出す物質のことです。
これは電球で例えるなら電球そのもの、ボクシングで例えるならボクサーに相当します。
放射能とは
こちらも上述したように、放射能とは、放射線を出す能力(の大きさ)のことです。
電球で例えるなら、どれだけ強い光を出すか、という能力(の大きさ)のことです。
ボクシングで例えるなら、ボクサーがパンチを出す能力(の大きさ)のことです。
電球の場合と同様に、ボクサーがどれだけ強いパンチを繰り出すか、という能力(の大きさ)と理解すれば良いかと思います。
なお、放射能の大きさについては、単位時間あたりの原子核の壊変の数で表されます。
つまり、放出される放射線の種類、数、エネルギーはさておき、単位時間あたりにどれだけ原子核が壊変して、より安定な物質になったか、という量で表わされます。
具体的には1秒間に原子核が1回壊変した場合、この大きさを1ベクレルと定義します。
放射能の単位の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
放射線とは
放射線については、こちらの記事を参照してもらえればと思います。結論だけ言うと、
- 放射線(広義)=全ての粒子線や電磁波
- 放射線(狭義)=電離作用のある放射線
です。
各用語の使い方
世間では特に「放射能」という言葉を誤って使っている例が見られます。
例えば、
- 「放射能が飛んでくる」
- 「放射能による汚染」
です。
「能」は「能力(の大きさ)」のことなので、「放射能が飛んでくる」と言う表現が誤っていることは分かっていただけると思います。
「放射線が飛んでくる」が正しい表現ですね。
同様に「放射能による汚染」も分からなくはないですが、やはり「放射性物質による汚染」という方が正しいこともご理解いただけると思います。
一方、「放射能」は単位時間あたりにどれだけ原子核の壊変が起こっているか、(そして結果としてどれだけの放射線を出しているか、)ということを示す目安になるため、例えば「高い放射能(濃度)を持った廃棄物」が正しい表現になります。
まとめ
繰り返しになりますが、
- 放射性物質=放射線を出す物質
- 放射能=放射線を出す能力
- 放射線=電離作用がある粒子線や電磁波(狭義)
です。
内容に応じて、正しく使い分けるようにしましょう。
ちなみに、以上の解説とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
日本語版
さらに、3分や1分以内で簡単にまとめた動画も作成しましたので、よろしければこちらもご覧ください。
(3分動画)
(1分動画)
英語版
英語版についても、3分や1分以内で簡単にまとめた動画も作成しましたので、よろしければこちらもご覧ください。
(3分動画)
(1分動画)
○ドイツ語版
3分や1分以内の簡易版のみですが、ドイツ語でも動画を作成しましたので、よろしければこちらもご覧ください。
(3分動画)
(1分動画)
本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。
今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
コメント
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