(簡単解説)「放射性物質」「放射能」「放射線」の違いとは何か。

放射線に関する基礎知識

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

今日は、

・「放射性物質」「放射能」「放射線」という言葉は良く聞くけど、その違いは何なのか、今更聞きにくいけど、具体的に知りたい。

こう言った疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (簡単解説)「放射性物質」「放射能」「放射線」の違いとは何か。
  2. 放射性物質とは
  3. 放射能とは
  4. 放射線とは
  5. 各用語の使い方
  6. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(簡単解説)「放射性物質」「放射能」「放射線」の違いとは何か。

ここでは、放射線が原子核の壊変によって放出されるケースを想定していますが、

簡単に言うと、

  • 放射性物質=放射線を出す物質
  • 放射能=放射線を出す能力
  • 放射線=電離作用がある粒子線や電磁波

のことです。

それぞれについて、上の図に示した、「電球」と「ボクシング」も例にあげて、その違いをより詳細にイメージしてみましょう。

放射性物質とは

上述したように、放射性物質とは、放射線を出す物質のことです。

これは電球で例えるなら電球そのもの、ボクシングで例えるならボクサーに相当します。

放射能とは

こちらも上述したように、放射能とは、放射線を出す能力(の大きさ)のことです。

電球で例えるなら、どれだけ強い光を出すか、という能力(の大きさ)のことです。

ボクシングで例えるなら、ボクサーがパンチを出す能力(の大きさ)のことです。

電球の場合と同様に、ボクサーがどれだけ強いパンチを繰り出すか、という能力(の大きさ)と理解すれば良いかと思います。

なお、放射能の大きさについては、単位時間あたりの原子核の壊変の数で表されます。

つまり、放出される放射線の種類、数、エネルギーはさておき、単位時間あたりにどれだけ原子核が壊変して、より安定な物質になったか、という量で表わされます。

具体的には1秒間に原子核が1回壊変した場合、この大きさを1ベクレルと定義します。

放射能の単位の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。

放射線とは

放射線については、こちらの記事を参照してもらえればと思います。結論だけ言うと、

  • 放射線(広義)=全ての粒子線や電磁波
  • 放射線(狭義)=電離作用のある放射線

です。

各用語の使い方

世間では特に「放射能」という言葉を誤って使っている例が見られます。

例えば、

  • 「放射能が飛んでくる」
  • 「放射能による汚染」

です。

「能」は「能力(の大きさ)」のことなので、「放射能が飛んでくる」と言う表現が誤っていることは分かっていただけると思います。

「放射線が飛んでくる」が正しい表現ですね。

同様に「放射能による汚染」も分からなくはないですが、やはり「放射性物質による汚染」という方が正しいこともご理解いただけると思います。

一方、「放射能」は単位時間あたりにどれだけ原子核の壊変が起こっているか、(そして結果としてどれだけの放射線を出しているか、)ということを示す目安になるため、例えば「高い放射能(濃度)を持った廃棄物」が正しい表現になります。

まとめ

繰り返しになりますが、

  • 放射性物質=放射線を出す物質
  • 放射能=放射線を出す能力
  • 放射線=電離作用がある粒子線や電磁波(狭義)

です。

内容に応じて、正しく使い分けるようにしましょう。

ちなみに、以上の解説とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

コメント

  1. […] You can read the same article in Japanese here. […]

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