(組織や活動内容について説明)IAEAについて(その2)

放射線に関する基礎知識

こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。

こちらの記事では、主に、第二次世界大戦から、IAEA設立までの経緯について解説しましたが、本記事では、IAEAの組織や活動内容について、もう少し詳細に触れたいと思います。

つまり、今回は、

・IAEAとはどういう組織なの?
・どんな組織体系になっていて、どんな活動をしているの?

こういった疑問に答えます。

○本記事の内容

  1. (組織や活動内容について説明)IAEAについて(その2)
  2. 国連組織におけるIAEAの位置付け
  3. IAEAはどこにあるのか
  4. IAEAの組織体系、活動内容
    • 事務局長、事務局長連絡室など
    • 技術協力局
    • 原子力エネルギー局
    • 原子力安全•セキュリティ局
    • 管理局
    • 原子力科学・応用局
    • 保障措置局
  5. まとめ

この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。

その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。

こういった私が、解説していきます。

(組織や活動内容について説明)IAEAについて(その2)

まずは、IAEAの国連関連組織内での位置付けと、その所在地について解説した後、IAEAの組織体系と、それぞれが行っている業務内容について解説していきたいと思います。

国連組織におけるIAEAの位置付け


こちらの記事でも解説したように、IAEAは、国連総会の承認により、1957年に設立された国際機関ではありますが、例えば、人々の健康の増進などを担当している世界保健機関(WHO)や、教育、科学、文化の発展と推進などを担当している国際連合教育科学文化機関(UNESCO)のような、いわゆる国連の専門機関ではありません。

ただし、連携協定を結んではいませんが、国連の関連機関ではあって、国連総会などで報告を行うなど、国際連合と密接な関係にあります。

IAEAはどこにあるのか


IAEAの本部は、ヨーロッパの中央に位置する、オーストリアの首都、音楽の都としても知られるウィーンにあります。

ウィーンは、ニューヨーク、ジュネーブに次ぐ第三の国連都市として知られ、IAEA本部があるウィーン国際センターには、IAEA以外にも多くの国際機関が設置されています。

ウィーンにあるIAEAの本部以外にも、カナダのトロント、東京の2箇所に地域事務所があり、多くの国際機関が集まっているニューヨークとスイスのジュネーヴには連絡室があります。

また、ウィーン郊外のサイバースドルフや、モナコのモンテカルロなどにも研究所があります。

IAEAの組織体系、活動内容

IAEAの大まかな組織体系は、事務局長をトップとし、その下で事務局長を補佐する事務局長連絡室などと、実務を担当する6つの局から構成されています。

それぞれの役割などについて以下で説明していきたいと思います。

事務局長、事務局長連絡室など


IAEAの事務局のトップは、事務局長です。

現在はアルゼンチン出身のラファエル・グロッシー氏が6代目の事務局長を務めています。

ちなみに、その前の事務局長は、日本出身の天野之弥氏で、2009年12月から事務局長を務めていましたが、在任期間中の2019年に亡くなっています。

その下には、事務局長を補佐する事務局長調整室、対外的な情報発信などを調整する広報室、法務室などがあります(詳細はこちらをご参照ください。)

次に、より具体的な実務を担当する6つの局について、以下で説明していきたいと思います。

技術協力局

技術協力局は、加盟国からの要請に応じて、そのニーズに応じた支援プロジェクトの立案・計画・実施などを行っている部署です。

部としては、地域別の「アジア・太平洋部」「アフリカ部」「ラテンアメリカ・カリブ部」「ヨーロッパ部」と、各部と全体調整を行う「プログラム支援・調整部」があります。

また、特にガンの治療については、「ガン治療行動プログラム」という専門の部署があって、途上国などに対して、人材育成、機器の提供や、放射線防護に関する支援などを積極的に行っています。

原子力エネルギー局


原子力エネルギー局は、主に原子力発電と、核燃料サイクルの推進などを担当しています。

部としては「燃料サイクル・廃棄物技術部」「原子力発電部」「計画・情報・知識管理部」があって、原子力エネルギー部関連の基準やガイドラインを作成したり、各国のエネルギー計画の評価や技術情報データベースを作成したりしています。

現在、気候変動対策やエネルギーセキュリティの観点から、原子力発電の新規導入を目指す国も増えており、その活動の重要性も今後益々高まっていくと考えられます。

原子力安全•セキュリティ局


原子力安全・セキュリティ局は、このブログで取り扱っているような、放射性物質で汚染された環境の回復に関する活動に加え、放射性廃棄物の処理、廃炉、一般公衆や労働者の放射線防護、被ばく線量評価、放射性物質の輸送、原子力発電所の安全審査など、放射線防護や原子力発電所の安全に関する事項に加え、テロ対策など、原子力発電所のセキュリティに関わる分野を担当しています。

部としては「原子力施設安全部」「放射線・輸送・廃棄物安全部」「核セキュリティ部」「インシデント・緊急事態センター」「原子力安全・核セキュリティ調整室」があり、別の記事でも解説しますが、世界の放射線防護などに関する基準として広く使用されているIAEA安全基準の策定に中心的な役割を果たしているのも、この原子力安全・セキュリティ局です。

管理局


管理局は、IAEA全体の予算の取りまとめや、採用などの人事に関する業務を行ったり、IAEAが行う会議のサポート、発行する文書の6つの国連公用語(英語、フランス語、スペイン語、中国語、ロシア語、アラビア語)への翻訳を行ったりしています。

部としては「予算・財務部」「会議・文書部」「総務部」「情報技術部」「人材部」があり、IAEA全体の運営をサポートしています。

原子力科学・応用局


原子力科学・応用局は、放射線の、基礎的な科学技術、また、より現場の課題を解決するための実践的な応用を担当しており、国際機関としては唯一、IAEAが所有している、前述したウィーン近郊のサイバースドルフや、モナコの首都、モンテカルロにある研究所の運営なども担当しています。

部としては「ヒューマン・ヘルス部」「環境研究所」「食料・農業における放射線技術部」「物理・化学部」があります。

特に、IAEAの加盟国への支援としては、原子力発電にかかるものをイメージするかと思いますが、金額ベースでは、放射線の医療、農業分野などにおけるものの方が圧倒的に多く、前述した技術協力局とも協働して、加盟国への技術支援に関し、中心的な役割を担っています。

保障措置局


最後に、保障措置局は、加盟国が、核物質や関連技術を平和目的にのみ使用するという、国際的な法的義務を遵守していることなどの確認を担当しており、北朝鮮やイランなどへの核査察のニュースなどで、IAEAの名前を聞いたことがある方も多いかと思います。

ちなみに、東京とトロントにある地域事務所は主に、この保障措置の実施に関する現地事務所です。

このように、IAEAの活動の中でも最も認知度や注目度が高い部署と言えるかと思いますが、部としては、「実施A部」「実施B部」「実施C部」「概念・計画部」「保障措置情報管理部」「技術・科学サービス部」があります。

「実施A部」「実施B部」「実施C部」が保障措置協定に基づく検認活動の実施において中心的役割を担い、そのアプローチや方法の開発は「概念・計画部」、採取したサンプルの分析や衛星画像の分析を「保障措置情報管理部」、実施部への科学的・技術的支援を「技術・科学サービス部」が行っています。

こうした活動に対して、2005年、当時のIAEA事務局長だった、モハメド・エルバラダイ氏と、IAEAにノーベル平和賞が贈られています。

まとめ

今回は、IAEAの本部や地域事務所などがある場所、そしてその組織構造についてご説明しました。

次回は、より詳細な活動内容などにより焦点を当ててご説明したいと思います。

ちなみに、以上とほぼ同じ内容を動画にもまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

日本語版

英語版

本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。

今回は以上となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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