こんにちは。放射線などについて分かりやすく解説している大地(だいち)です。
こちらの記事に続き、私が旅する中で実際に体験してきた、放射線を巡る欧州の利用実態や環境修復の取組についてレポートしたいと思います。
第1回のバート・ガシュタイン、第2回のバート・シュレーマに続き、第3回は、チェコ北西部にある町で、鉱山から湧き出すラドンを豊富に含む鉱山水(ラドン水)を利用した放射線療法で知られるヤーヒモフ(Jáchymov。ドイツ語名はJoachimsthal。)についてご紹介したいと思います。
ヤーヒモフは、16世紀に良質な銀の産出と銀貨(ターラー)の鋳造によって繁栄し、第二次世界大戦後には政治犯らが強制労働に従事したウラン採掘という悲劇も経験した町です。
現在は、その負の歴史を伝える一方で、環境修復が行われ、またラドン水を利用した療養の復活による再生を遂げた保養地としても知られています。
つまり、今回は、
・ ヤーヒモフってどんな町なの?
・ ヤーヒモフにおける銀やウラン採掘の歴史って?
・ ヤーヒモフではどのように環境修復がなされたの?
こういった疑問に答えます。
○本記事の内容
- (欧州放射線現地レポート)ヤーヒモフにおける鉱山開発・環境修復・放射線利用
- はじめに
- 旅程とルート
- ヤーヒモフについて
- 銀鉱山とヤーヒモフの繁栄
- 銀採掘の歴史
- 王立造幣局博物館
- ウラン採掘と強制労働
- ウラン採掘の歴史
- 政治犯等による強制労働
- 採掘終了後の環境修復について
- 鉱山施設と廃石堆積場
- 修復の考え方と実施主体
- 現在の土地利用
- ラドン水を利用した療養
- 世界初期のラドン療養地としての発展
- スヴォルノスト鉱山と鉱山水
- ラジウム・パレス
- アストリア見学坑道
- アグリコラ温泉施設
- 学習トレイル(ラドン・トレイル)について
- 学習トレイル(ラドン・トレイル)とは
- みどころ① スヴォルノスト鉱山
- みどころ② 諸聖人病院教会
- 学習トレイル(ヤーヒモフの地獄)について
- 学習トレイル(ヤーヒモフの地獄)とは
- みどころ① 第一坑道
- みどころ② 恐怖の階段(マウトハウゼン階段)
- みどころ③ 旧市営池
- みどころ④ ニコライ強制収容所
- みどころ⑤ ヤーヒモフの森
- みどころ⑥ エドゥアルト鉱山
- みどころ⑦ ハインツ池
- まとめ
この記事を書いている私は、2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、除染や中間貯蔵施設の管理など、継続して放射線の分野での業務に従事してきました。
その間、働きながら大学院に通い(いわゆる社会人ドクター)、放射線の分野で博士号を取得しました。
こういった私が、解説していきます。
(欧州放射線現地レポート)ヤーヒモフにおける鉱山開発・環境修復・放射線利用
まず、旅の基本情報についてお伝えした後、ヤーヒモフの歴史、ヤーヒモフにおける環境修復の取組、2つの学習トレイルについて解説していきます。
はじめに
ヤーヒモフについては、当初は全く知らなかったのですが、インターネットを使って、放射線の利用や環境修復について現地で体験できる場所を探していたところ、欧州にある代表的な場所として挙げられていたこと、他の場所に比べるとまたウィーンからのアクセスもまだ比較的良好だったこと、また、カルロヴィ・ヴァリという、放射線にゆかりのある、チェコの保養地も合わせて訪問できることから、今回訪問することにしました。
カルロヴィ・ヴァリについては、また別の記事で報告をしたいと思います。
旅程とルート

(プラハ、カルロヴィ・ヴァリ、ヤーヒモフの大まかな位置関係。正確な位置については別途地図等でご確認ください。)
今回の旅程とルートは以下の通りです。
5月28日(木)
・早朝にウィーンを出発。ウィーン中央駅から、4時間程でプラハ中央駅に到着。
・プラハ駅中央駅で地下鉄に乗り換え、バスステーションへ。高速バスに乗り換え、2時間ほどでカルロヴィ・ヴァリに到着。
・カルロヴィ・ヴァリでバスに乗り換え、1時間ほどでヤーヒモフに到着。
・ホテル(ラジウム・パレス)に到着後、歩いてヤーヒモフの中心街へ。王立造幣局博物館を訪れた後、学習トレイル(ラドン・トレイル)を散策してホテルへ。
・ヤーヒモフ泊。

(プラハ中央駅)

(カルロヴィ・ヴァリ下駅前のバスステーション)
5月29日(金)
・学習トレイル(ヤーヒモフの地獄)を4~5時間かけて散策。
・散策後、ホテル近くのアストリア見学坑道を訪問。また、その向かいにある温泉保養施設であるアグリコラに数時間滞在。
・ヤーヒモフ泊。
5月30日(土)
・ヤーヒモフを後にして、カルロヴィ・ヴァリへ。荷物を駅で預けて、カルロヴィ・ヴァリの町を数時間散策。
・カルロヴィ・ヴァリから高速バスで2時間ほどでプラハのバスターミナルへ。さらに地下鉄を乗り継いでプラハ中央駅へ。
・プラハ中央駅から電車で4時間ほどでウィーン中央駅へ。

(プラハのバスステーション(写真は行きに撮影したもの))
ヤーヒモフについて
ヤーヒモフ(Jáchymov)は、チェコ西部のエルツ山地に位置する人口約2,300人の小さな町です。
16世紀に銀鉱山の発見によって栄え、その後、銀鉱山から産出したピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)は、マリ・キュリーらによるラジウムの発見につながったほか、世界初のラドン温泉療養地の一つとして発展してきました。
一方で、第二次世界大戦後にはウラン採掘が本格化し、強制労働収容所が設けられるなど、町は冷戦期の歴史とも深く関わりました。
現在では、鉱山跡地の環境修復が進められるとともに、鉱山遺産はユネスコ世界遺産「エルツ山地/クルシュネホジー鉱山地域」の構成資産として保存・活用されています。
町の銀鉱山としての繁栄、ウラン鉱山の採掘と強制労働、環境修復の取組、放射線(主にラドン水)の利用、実際に歩いてきた学習トレイルについて順に紹介していきます。
銀鉱山とヤーヒモフの繁栄
次に、ヤーヒモフにおける銀採掘とその繁栄の歴史について見ていきましょう。
銀採掘の歴史
ヤーヒモフの歴史は、16世紀初頭の銀鉱山の発見から始まります。
1516年頃、この地域で豊富な銀鉱脈が発見されると、町は急速に発展しました。
当時、この地域は神聖ローマ帝国のボヘミア王国に属していましたが、鉱山開発に伴ってザクセン地方などから多くのドイツ語話者が移住したため、町ではドイツ語が広く用いられ、町は「ザンクト・ヨアヒムスタール(Sankt Joachimsthal、「聖ヨアヒムの谷」の意)」と呼ばれていました。
1519年には、この地で産出された銀を用いて「ヨアヒムスターラー(Joachimsthaler)」と呼ばれる大型銀貨の鋳造が始まりました。
この銀貨はヨーロッパ各地で広く流通し、その名称は後に「ターラー(Thaler)」へと変化しました。
さらに、スペイン領アメリカで広く流通した「スペイン・ドル(Spanish Dollar)」もターラー銀貨の影響を受けており、これがアメリカ独立後にアメリカ合衆国の通貨「ドル(Dollar)」の名称として採用されました。
王立造幣局博物館
ヤーヒモフの中心部に建つ王立造幣局博物館(Royal Mint Museum)は、16世紀に実際に貨幣の鋳造が行われていた王立造幣局の建物を利用した博物館です。
1520年に設けられたこの造幣局では、ヤーヒモフで採掘された銀を用いてヨアヒムスターラー銀貨をはじめとする貨幣が1671年まで製造されていました。
現在も地下には、銀を溶解するための炉や煙道の一部が保存されています。
館内では、ヤーヒモフの歴史をはじめ、銀鉱石の採掘方法や鉱山技術、貨幣の製造工程などが、模型や映像、実物資料を用いて分かりやすく紹介されています。
また、実際に鋳造されたヨアヒムスターラー銀貨や貨幣製造に使用された道具も展示されており、当時の鉱山都市としての繁栄を感じることができます。
展示は銀採掘だけでなく、ピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)の採掘、マリ・キュリーらによるラジウムの発見、第二次世界大戦後のウラン採掘などにも及んでいます。
ヤーヒモフが銀の町から放射線科学、そしてウラン採掘の歴史を担う町へと発展していく過程を、一つの博物館で体系的に学ぶことができる点が大きな特徴です。
展示は私の想像以上に充実しており、見学には意外と時間がかかりますので、ヤーヒモフを訪れる際は、ぜひ時間に余裕を持って見学することをおすすめします。
ウラン採掘と強制労働
ウラン採掘の歴史
政治犯等による強制労働
採掘終了後の環境修復について
鉱山施設と廃石堆積場
修復の考え方と実施主体
現在の土地利用
ラドン水を利用した療養
世界初期のラドン療養地としての発展
スヴォルノスト鉱山と鉱山水
ラジウム・パレス
アストリア見学坑道
アグリコラ温泉施設
学習トレイル(ラドン・トレイル)について
次に、現地に整備された2つの学習トレイルのうち、ラドン・トレイルという散策路を私が実際に歩いて感じたみどころについて書いてみました。
学習トレイル(ラドン・トレイル)とは
学習トレイル(ラドン・トレイル)は・・・
みどころ① スヴォルノスト鉱山
みどころ② 諸聖人病院教会
学習トレイル(ヤーヒモフの地獄)について
学習トレイル(ヤーヒモフの地獄)とは
学習トレイル(ヤーヒモフの地獄)は・・・
みどころ① 第一坑道
みどころ② 恐怖の階段(マウトハウゼン階段)
みどころ③ 旧市営池
みどころ④ ニコライ強制収容所
みどころ⑤ ヤーヒモフの森
みどころ⑥ エドゥアルト鉱山
みどころ⑦ ハインツ池
まとめ
ヤーヒモフは・・・
本記事の英語版はこちらからご覧いただけます。
今回は以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。

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